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2017年3月25日
みんなのクレジットの実態は“俺だけのクレジット”?―信用リスクを甘く見ちゃいかんのですよ
最近、ソーシャルレンディングが一部で流行っていたのですが、そのひとつである「みんなのクレジット」に関して証券取引等監視委員会が金融庁に処分を勧告しました。
株式会社みんなのクレジットに対する検査結果に基づく勧告について(証券取引等監視委員会)
これが事実ならかなり悪質な事案です。「みんなのクレジット」と銘打って一般投資家から資金を集めておきながら、実態は白石伸生代表と白石一族のための“俺だけのクレジット”だったわけですから。ただ、みんなのクレジットに出資していた人の迂闊さも指摘したい。だって、白石伸生の名前を堂々と出して資金を集めていたわけですから。この名前を聞いてピンとこない人は、そもそもソーシャルレンディングのような新しく登場した投資スキームに参加するべきではありません。投資に関して運営主体の信用リスクを甘く見ちゃいかんのですよ。
みんなのクレジットの問題点については、証券取引等監視委員会が発表した参考資料の資金フロー図が分かりやすいです。
ようするに集めた資金の大部分を本来の目的(不動産ローンファンドや中小企業支援ローンファンド)ではなく、親会社とその関係会社(甲グループ)に融資し、まともな担保も取っていなかったわけです。その上、甲は債務超過となっており、みんなのクレジットからの資金で増資することで債務超過を解消したとか。資金を増資に使ってしまうと返済義務がなくなりますから、ファンドは困るはずです。そこでファンドの償還資金には、まだ償還期限が来ていない他のファンドの資金が流用さている疑いがあると。これって「ポンジスキーム」では。
おまけに白石伸生代表がファンド出資金を自身の借入れ返済などに使用しているというのは驚きました。アカンすぎるでしょう、それは。出資者には気の毒な話ですが、「みんなのクレジット」というのは、白石代表と白石一族が一般投資家から資金を掠め取るための“俺だけのクレジット”だったと言わざるを得ません。
もちろん、みんなのクレジットの側にも言い分があるはずです。実際にHPを見ると反論が掲載されていました。こうなってくると、完全に金融当局との係争になるわけですが、そういった係争を抱えているという事実だけをもってしても、一般人の投資対象とはなりえないし、してはいけないということを強調しておきたいと思います。なにごとも「君子危うきに近寄らず」は大切です。
同時に、今回の騒動で改めて思うのは、みんなのクレジットに出資したり、あるいは軽々に推奨していた人の迂闊さです。なにが迂闊なのかというと、投資に関して運営主体の信用リスクを軽視しすぎているということ。新奇な投資手法が登場すると、それを推奨する人は投資スキームの説明にはとても丁寧であり、それがいかに素晴らしい仕組みかを力説します。しかし、その投資活動を実行する運営主体の信用リスクに対して、あまりに無頓着であり、ひどいのになると「信頼できる業者」としか言わない。なにが信頼できる業者なのですか?
今回の場合でも、ちょっと投資について詳しい人なら「白石伸生」という名前を聞いただけで半笑いでした。白石氏といえば宝石販売会社だったシーマの創業者として、白石一族ともども”クソ株”の世界では有名です。最近は親切な人がいて、昔のネット報道をきちんとウェブ魚拓で残していてくれます。
ダイヤを芳香剤にすり替えた!? 宝石会社シーマの実態1(「BusinessJournal」ウェブ魚拓)
ダイヤを芳香剤にすり替えた!? 宝石会社シーマの実態2(同)
問題は、この記事が真実かどうかではありません。こうした報道をされていた一族の人間が、はたして自分のお金を託す相手として信用できるのかという投資家自身の判断力の問題です。それが投資に際して、相手の信用リスクを判断するということです。(ちなみに私はプロレスファンなので、その点から白石氏を信用できませんでした。彼は一時、全日本プロレスの経営に参画しましたが、まさに全日崩壊の原因を作った張本人だと感じていたからです。)
「投資にリスクはつきもの」と誰もが言うのですが、その場合、投資対象となる資産・物件に関するリスクばかりがクローズアップされがち。でも同じくらい気を付けなければならないのが、運営主体の信用リスクなのです。ほとんどの金融詐欺事件の被害者というのは、この信用リスクを軽視したがために事件に巻き込まれている。そして、信用リスクの判断というのは、とても難しいものです(その意味で、大手金融グループの商品が売れるのには、それなりの理由があるのです)。だからこそ、少しでも運営主体の信用リスクに不安を感じるような案件には、一般庶民は近づいてはいけない。今回の事案は、そういった"投資の常識"を改めて思い起こさせてくれるものでした。
※私は、ソーシャルレンディングという仕組み自体を別に否定しません。崇高な理念を掲げて真面目に運営されている業者も存在するはずです。ただ、ほとんどのソーシャルレンディングは匿名組合という方式を採用していますので、運営する関係者それぞれの信用リスクを遮断する仕組みが弱いです。この点が法令で関係者の信用リスクを何重にも遮断して投資家を保護している通常の株式や債券、投資信託への投資と異なります。だから、ソーシャルレンディングのような新奇な投資スキームに資金を投じる場合は、それこそ崇高な理念に賛同したお布施として、ポケットマネーのレベルでお金を投じることをお勧めします。そして、間違っても軽々に人に勧めてはいけないと考えています。
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