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2017年1月10日
銀行のリスク商品提案はヤバイ―三菱東京UFJ銀行へ資産運用の相談に行ってきました
私がメインバンクとして使っている三菱東京UFJ銀行から可愛い手書きのラブレターを貰ったという話を以前に紹介しました。
三菱東京UFJ銀行からのラブレター
手紙の差出人はカオリちゃんという女性行員。どうも手紙の筆跡から若そうな雰囲気です。これはもう行くしかないということで、昨年末に三菱東京UFJ銀行へ資産運用の相談に行ってきました。それでいろいろ商品提案を受けたのですが、想像以上に肉食系で驚いたのです。噂には聞いていましたが、はっきり言って銀行のリスク商品提案はヤバイです。
ワクワクしながら自宅近くの支店を訪れると、ラブレターの差出人であるカオリちゃんが登場しました。やった、若い! 聞けば入行2年目らしいですからピチピチの20代です。ルックスは美人系ではなく可愛い系で、見るからに中高年やシニア層に信頼されそうな親しみと愛嬌のある雰囲気の女の子でした。
早速相談が始まったのですが、まず最初にカオリちゃんは「定期預金でこれだけお預かりしているのですが、最近は金利も低くて申し訳ないです」と謝られました。なるほど。定期預金である程度の金額を預けている人が金融商品の営業対象になるようです。それはそのはずで、普通預金は流動性が必要な資金の可能性が高いですから、いくら残高があってもリスク商品は勧められないのでしょう。
それで私も「何か定期預金に替わるおすすめの商品はありますか」と聞いたところで、いよいよ手合わせが始まりました。まずカオリちゃんが最初に提案してきたのは低解約払戻型貯蓄性保険。しかも終身生活介護保険が付いています。いきなり鋭い攻めが来ました。保険料払込期間は5年で一括払込みも可能です。5年以内に解約すると元本割れとなりますが、それ以降は返戻率が100%を超えます。10年だと返戻率は105.1%。「最近は低金利の影響でお得な貯蓄性保険の販売停止が相次いでおり、この商品もいつまで販売が継続されるか分からくなっているんですよ」と鋭いスピンを効かせてきます。
そこで私が「返戻率が10年で105.1%ということは、年利換算だと何%ですか」と聞くと、カオリちゃんは「え?」とちょと驚いた風ですが、すぐに「計算してみます」と電卓を取り出す。この段階で“このお客さん、金融商品には詳しいのかも”と悟られたようです。結局、年利換算だと0.6%弱。私は「5年間解約できずに、しかも利回りが年利0.6%程度に固定されるというのはちょっともったいないですよね」と言って、なんとかカオリちゃんの攻めをこらえました。
「もし利回りにこだわるのでしたら、リスクはありますが、こういった商品もあります」と言ってカオリちゃんが次に出してきたのが期限前償還条項・円償還条項付円/豪ドルデュアル・カレンシー債券。期間は約1年で利率は1%ですが、期間内に円/豪ドル相場が判定レートを超えると大幅な元本割れとなる仕組み債です。あまりに激しい攻めに私もこらえるのに精一杯です。
そこで、金融機関に仕組み債や仕組み預金を勧められた際に反撃手段としていつも使う質問を繰り出しました。「これって普通の債券や預金よりも高い利率になるのは、どういった仕組みなんですか」と聞いたのです。するとさすがのカオリちゃんも答えに詰まる。でも、カオリちゃんの能力が低いわけではありません。私の経験上、オプションの売りを組み込んだプレミアム収入で利回りを底上げしているという仕組み債・仕組み預金の“仕組み”をきちんと説明できる金融機関の営業パーソンなんかに出会ったことがありませんから。
「仕組みがよく分からないものにお金を投じるのは、なんとなく嫌なんだよね」といってカオリちゃんの攻めをかわしたところで、ようやく私の方に主導権が移りました。そこで、そもそも支店を訪問した目的として「個人向け国債を買いたいんですが、いつも使っているネットバンキングサービスだと買い方が分からないんです。どうやったらネットバンキングで個人向け国債を買えますか」と質問しました。すると驚いたことに「ネットバンキングでは個人向け国債は取り扱っていないんです。営業時間内に店舗で手続きしていただかなくては」という答え。三菱東京UFJ銀行、ダメじゃん。だって普通のサラリーマンは平日の営業時間に銀行の店舗になんか行けませんよ。
私がしょんぼりしていると、カオリちゃんも申し訳なさそうに個人向け国債のパンフレットを一式持ってきてくれました。ただ、そのときに「でも個人向け国債は今、10年物でも年利0.05%ですよ。ご紹介した保険は0.6%弱ですから、10倍以上です」と言われた時には、”カオリちゃん、なかなかやるな”と思いました。まだ入行2年目ですが、少なくとも営業ウーマンとしての素質を感じました。
結局、その日は何も買わず。せっかく手合わせしたのにカオリちゃんには申し訳ないことをしました。そこで「投資信託はeMAXISバランス(8資産均等型)をこちらの銀行で積立購入していますし、これは今後も買い増していく予定です」と言うと、「それはぜひ今後も続けてください」と嬉しそうな笑顔。
それで調子に乗って「個別株の購入は同じMUFGグループのカブドットコム証券を使っています」「クレジットカードもメインカードは三菱UFJニコスのプラチナカードで、年会費2万円を払っています」と、私がMUFGを愛用していることを盛んにアピールしてしまいました。ついにはインデックスファンドの積立投資の面白さまで説明したら、カオリちゃん方が「私も積立投資をやってみようかな」と言い出す展開に。手合わせ後のアフタートークを楽しんだところですっかり打ち解けた雰囲気になって店舗を後にしました。別れ際にはカオリちゃんから「何か相談したいことがあれば、いつでも連絡ください」と言われちゃいました。
そんなわけで、なかなか楽しい時間を過ごせたわけですが、肝心の相談内容については「銀行が提案するリスク商品はヤバイ」というのが率直な印象です。どうも最近の銀行は保険と仕組み債券・仕組み預金の提案に力を入れている。逆に投資信託はあまり強く推してきません。おそらく投信の営業は、お上の目が厳しくなっているからでしょう。あと、やっぱり預金との比較で利回りの高さをアピールするというのは昔からの常套手段なのです。
そして、普通の個人投資家は、こういった複雑な仕組みの金融商品を買うべきではありません。なぜなら、仕組み債券が典型ですが、リスクに対してプレミアムが適正なのかを判断できないし、金融機関の営業担当者もそれを説明できないからです。やはり銀行が勧める金融商品は、預金と個人向け国債を除いて、あまりお勧めできないということを改めて感じました。そもそも銀行で複雑な金融商品を売るということ自体が無理矛盾なのです。この辺りの事情は以前にもブログで書きました。
銀行で複雑な金融商品を売るという無理矛盾
そういう厳しい環境の中で会社が求める結果を出さなければならない銀行員は、ある意味で可哀想な存在だとさえ感じます。たぶんこの問題は銀行の現在のビジネスモデルが大きく変わらない限りは解決しないのでしょう。今回、私に対応してくれたカオリちゃんは、さすがにメガバンクに採用されるだけあって有能な女性なのです。ただ、有能なだけに、その能力を銀行が求める方向にしか使っていない。それは彼女にとっても可能性を狭めることのような気がします。
今回、私のようなちょっと意地悪な顧客に対応したことで、世の中には銀行の言うことを何でもハイハイと言って聞く客だけでなく、販売担当者以上に商品に詳しい”プロ消費者”がいることを知ったことは、カオリちゃんにとっても良い経験になったのでは。せっかく私に付いてくれた担当さんなのですから、ぜひ今後も頑張って欲しいと思います。
【蛇足】
私が銀行に資産運用の相談に行ったことに対して”商品を買うつもりもないのに行員に時間を使わせて、性格悪いな”と批判する人がいるかもしれません。しかし、私はそうは思いません。私も営業を担当したことがありますが、営業担当者には必ずノルマがある。そして、ノルマは売上ノルマだけではないはず。どれだけ営業電話をかけたのか、何人の客と会ったのかという件数もノルマの対象になっているケースが多いのです。せめてそういったノルマの達成には協力してあげたい。だから私は金融機関からの営業電話を無碍に切るようなことはしません。時間があれば店舗に足を運んで話も聞く。それは同じようにノルマを抱えるサラリーマン同士としての仁義だと考えているのです。
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