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2017年1月9日

セゾン投信が2ファンドをゆうちょ銀行でも販売へ―販売会社での販売を開放する狙いは何だろうか



直販投信としてインデックス投資家の間でも根強い人気を集めているセゾン投信ですが、ここにきて大きな動きがありました。「セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド」と「セゾン資産形成の達人ファンド」の2ファンドを1月30日からゆうちょ銀行でも販売すると発表しました。

ゆうちょダイレクトへ商品提供開始のお知らせ(セゾン投信)
投資信託商品のラインアップを拡充!~お客さまのライフプランや資産運用ニーズに合わせ、長期安定的な資産形成をお手伝い!~(ゆうちょ銀行)

セゾン投信は現在、日本郵便と資本提携していますから、同じ日本郵政グループであるゆうちょ銀行での販売というのはある意味で自然な流れかもしれません。ただ、セゾン投信は従来、直販投信として販売会社をと通さない直販にこだわってきました。それがここにきて販売会社での販売を開放するのは、どういった狙いがあるのでしょうか。

今回、セゾン投信の2ファンドはゆうちょ銀行のネットバンキングサービス「ゆうちょダイレクト」での取り扱いとなります。このためインターネット専用商品となり、ノーロード(購入手数料なし)での販売です。この辺りは、あくまでノーロードにこだわるセゾン投信の意向が色濃く反映されたような気がします。実際に今回の取り組みに関してセゾン投信では次のように理由を説明しています。
ネットバンキング・サービスである「ゆうちょダイレクト」を通じてセゾン投信の商品をご提供することで、お客さまの利便性を高め、自助自立した資産形成の普及に大きく貢献できると判断いたしました。
ネット販売専用商品としてならノーロードを維持できるので、セゾン投信が掲げるフィデューシャリー・デューティーにも適合するという判断なのでしょう。

今回の動きを見て、セゾン投信は販売戦略を大きく転換したと感じました。従来は直販というスタイルにこだわっていたものが、フィデューシャリー・デューティーが確保できるなら販売会社を通じた販売も認めるという戦略です。そう考えると、すでに楽天証券の個人型確定拠出年金(iDeCo)プランに今回と同じ2ファンドを供給していることとも平仄も合います。

では、なぜセゾン投信はここにきて販売戦略を大きく転換したのでしょうか。これはあくまで個人的な憶測ですが、やはり日本における投資信託ビジネスの環境が大きく変化するとの読みがあると思います。

従来、セゾン投信が掲げる低コストファンドによる長期投資・積立投資というのは、かなり金融リテラシーの高い層が主力顧客でした。こうした層への販売では、直販という形をとることで受益者と直接コミュニケーションするという手法は非常に有効だったのです。しかし今後は、もっと幅広い層に商品を提案する必要性が生じます。その背景にあるのが、iDeCoの普及と、2018年に創設予定の積立NISA制度の存在ではないでしょうか。

はっきり言ってこれまで投資信託の積立投資というのは、かなり投資について自分で勉強しているマニア層が中心でした。しかし、iDeCoや積立NISAとなれば、もっとライトな層に対してアピールしなければなりません。その場合、直販という販売形式にこだわるのは自らの選択肢を狭くしてしまいます。なぜなら、商品の良さをアピールする以前に、制度上の制約を受けるからです。

例えばiDeCoで商品を売るためには運営管理機関である金融機関を通じて販売する必要があります。さわかみ投信のように自らが運営管理機関としてiDeCoプランを立ち上げるという方法もありますが、そうなるとシステムや商品ラインアップを新たに構築する必要があり、それは時間もコストもかかる。そこでセゾン投信としては楽天証券のiDeCoプランに商品を供給するというスタイルを採用したのでしょう。

同じように積立NISA制度の運用が始まれば、やはり直販にこだわるのは賢明な判断ではなりません。NISAは1人1口座しか開設できませんから、直販投信でNISA口座を開設するのは、商品の選択肢の観点からあまり合理的ではないからです。実際、これまでのNISAでも直販投信はどこも大苦戦しています。そこで、ゆうちょ銀行でも販売することで、ゆうちょ銀行の積立NISA口座を通じてセゾン投信の商品を販売する道が開けます。そして、ゆうちょ銀行は事実上、日本最大の金融機関であり、郵便局という日本最大のネットワークを持ちます。これを通じて、よりライトな層へもアクセスできる可能性が開けます。

一方、ゆうちょ銀行にとってもセゾン投信の商品を扱うメリットは大きいのでは。とくに今後始まるであろう積立NISAの契約者獲得競争でセゾン投信の商品は大きな武器になると思う。積立NISAは投資信託の積立が基本となりますから、投信積立に初めて挑戦する人にとってセゾン投信の商品は提案しやすいでしょう。しかもNISAは売買で枠を消費してしまうので、口座内のリバランスが難しく、結果的にバランス型ファンドが提案の主力にならざるを得ない。そうなると、とくにセゾン・バンガード・グローバルバランスファンドは非常に有力な選択肢となるのです。

こうしたことを考えると、今回のセゾン投信の動きというのは非常に戦略的に理にかなっている。そして、これからの日本人の資産形成で大きな役割を担うであろうiDeCoと積立NISAという制度にセゾン投信としてきちんとコミットメントするという意思を感じます。それはセゾン投信が設立以来掲げる「 一般生活者の将来に向けた資産形成をサポートする」という理念にもかなうと思います。

また、販路が拡大することで従来からの受益者にとってもメリットがあるでしょう。販路拡大で純資産残高がさらに拡大する可能性があるからです。とくにセゾン・バンガード・グローバルバランスファンドのようなインデックス運用のファンドにとって純資産残高の拡大は運用の安定性向上、コスト逓減の観点から極めて好ましいことです。

今後、セゾン投信の商品は直販と販売会社という二つのルートで購入できるようになるわけですが、どちらで購入するべきかは、それこそ受益者の好みで選べばいいでしょう。やはり運用会社との直接コミュニケーションを求めるなら直販で買えばいい。手続きの利便性やNISAでの購入を求めるなら販売会社を通じて買うということになります。いずれにしても受益者にとって好ましい選択肢ができるわけですから、それは良いことなのです。

そして、セゾン投信には何より今後もすべての受益者に対して良質な情報発信を続けて欲しい。それこそセゾン投信がここまで支持され続けた理由ですから。直販だけでなく楽天証券のiDeCoプランやゆうちょ銀行を通じてファンドを購入している人、あるいはこれから購入しようとしている人に対して今後も自社の理念を語り続けることがとても大切になると指摘しておきたいと思います。

【ご参考】
セゾン投信のファンドを直販で買う場合、ネットから無料で口座を開設することができます。⇒セゾン投信



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