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2015年4月18日

なぜ信託報酬は下がらないのか

日本の投資信託は、信託報酬が極めて高額なままで高止まりしていることが何度も問題とされてきました。最近ではインデックスファンドを中心に信託報酬が低い商品も増えてきたのですが、不思議なことに運用期間の長いインデックスファンドのなかには、いまだにひと昔前の信託報酬を続けていて、コスト面ですっかり競争力を失ったものも少なくありません。これらファンドの信託報酬がなぜ引き下げれられないのか常々疑問に感じていたのですが、なんとなく理由が分かりました。きっかけはニッセイアセットマネジメントが低コストインデックスファンドシリーズである購入・換金手数料なしシリーズで新たにニッセイTOPIXインデックスファンドを設定したことです。

ニッセイAMは、これまでもTOPIXに連動するインデックスファンドとしてニッセイTOPIXオープンを運用してきました。今回、新たに購入・換金手数料なしシリーズとしてニッセイTOPIXインデックスファンドを設定すると聞いたとき、なぜニッセイTOPIXオープンの信託報酬を引き下げるのではなく、マザーファンドが同じのベビーファンドとして〈購入・換金手数料なし〉ニッセイTOPIXインデックスファンドを設定するのかわかりませんでした。

しかし、両ファンドの目論見書を見て、なんとなく理由が分かったような気がしました。ポイントは信託報酬の内訳にあります。両ファンドの信託報酬の内訳を比較すると、次のようになります。

ニッセイTOPIXオープン
信託報酬(税抜)0.5%
(内訳:委託会社0.215%、販売会社0.215%、受託会社0.07%)

〈購入・換金手数料なし〉ニッセイTOPIXインデックスファンド
信託報酬(税抜)0.29%
(内訳:委託会社0.13%、販売会社0.13%、受託会社0.03%)


委託会社、販売会社、受託会社とも取り分をほぼ半減していることが〈換金・購入手数料なし〉ニッセイTOPIXインデックスファンドの低コストの秘密だということがよくわかります。逆にいうと、これだけの低コストを実現するためには委託会社である運用会社の努力だけでは不可能ということです。

だから既存のニッセイTOPIXオープンの信託報酬を引き下げることが難しいことは想像に難くありません。仮に委託会社であるニッセイAMが自社の取り分を減らしても、大きなコストダウンにはならない。どうしても販売会社にも取り分の減額をお願いしなければなりません。現在、ニッセイTOPIXオープンは証券会社10社銀行1行で販売されていますが、彼らが信託報酬の中の販売会社取り分の引き下げに同意するとは考えにくい。だったら、最初から信託報酬を低く設定したファンドを新規組成し、別途販売会社を募ったほうがやりやすいということでしょう(あくまで個人的な想像ですが)。

理屈はわかるのですが、なんとなく業界全体で非効率なことをしているという印象がぬぐえません。販売会社も目先は信託報酬が多く入ってきた方がありがたいでしょうが、コスト的に競争力のないインデックスファンドは純資産残高の伸びもあまり期待できなくなりますから、長期的には損をしているような気がします。そういったことも考えると、やはり投資信託の低コスト化のためには、販売会社の意識が大きく変わらないといけないのかもしれません。

ちなみに、低コストインデックスファンドの代表格である三井住友トラスト・アセットマネジメントのSMTインデックスシリーズは過去に2010年と12年の2回にわたって信託報酬を引き下げています。よくよく考えると、これってすごいことだったわけです。しかし、運用会社単独の努力では現在の信託報酬が限界でしょう。さらなる低コスト化のためには、販売会社の取り分を引き下げなければ不可能です。やはり、インデックスファンドの今後のコスト競争の行方は、販売会社の意識変革にかかっているといえます。



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