投資一任サービスは、文字通り投資家が金融機関に投資判断を一任するわけですから、投資対象の選択肢は限りなく広い方がいいはずです。ところが、実際に販売されているラップ口座商品は投資対象としてラップ専用と称する投資信託に限定するケースがほとんど。契約者からすれば運用一任するとかえって投資対象の選択肢が狭まるという本末転倒な事態となっています。
また、ラップ専用商品の構成が極めて不誠実です。例えば三井住友銀行とSMBC日興証券の「SMBCファンドラップ(愛称マイ・パイロット)」というラップ口座商品があります。最低運用金額は300万円と敷居は低いですが、信託報酬以外に支払うラップフィーは固定報酬型が純資産総額の1.512%、成功報酬併用型が基本報酬1.188%+成功報酬(運用益の10.8%)となり、極めて高コストです。しかし、それ以上に問題なのが投資対象となる専用ファンドのラインナップ。大和住銀投信投資顧問が運用する「SMBCファンドラップ・シリーズ」14本と日興MMFで構成されています。投信14本中、インデックス型は1本のみ。しかもその1本もコモディティに投資するファンド(しかも指数連動リンク債への投資)です。14本中、13本がアクティブファンドというのは、いかがなものか。アクティブファンドが悪いといっているのではありません。アクティブファンドしか選択できないラインナップが不誠実だといいたいのです。
本来、ラップ口座のように投資を一任される以上は、金融機関はあらゆる選択肢から契約者にとって最適なポートフォリオ配分と商品選択をを行うのが誠実な姿勢のはずです。だとすれば専用ファンドを作って投資対象を限定するのがそもそもおかしい。取り扱っている全商品(国内外ETFを含めてもいいでしょう)を対象として、その上で堂々とラップフィーを取ればいいのです。もしかしたら、本当の富裕層向けプライベートバンクサービスでは、そのようなことが行われているのかもしれませんが、私には知る由もありません。
結局、ラップ口座と称して販売されている商品からはわかるのは、メガバンクが運用金額300万円程度の低資産の人に対して真面目に向き合おうとしていないという姿勢だけです。しょせんラップ口座商品も、本当の投資一任サービスとはかけ離れて、庶民から手数料を巻き上げる手段に堕してしまっているといわざるを得ないのは残念なことです。


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