あいかわらず円安が続いています。このため最近では円安の弊害を指摘する声が大きくなってきました。そうした中、ちょっと面白い分析を見つけました。楽観派アナリストの最右翼である武者陵司先生です。
円安のデメリット、本質的には何もない~容認できない悪い円安論~(武者リサーチ)
円安の原因としては、日米の金利差や貿易収支・経常収支などが考えられるのですが、武者先生の見立てではいずれもピークを過ぎており、現在の根強い円安基調を説明する材料にはなり得ないということです。ではいったい何が現在の円安の背景にあるのか。武者先生は次のように指摘します。
それは地政学、米当局の意志としか考えられない。昨年6月、11月の米財務省による為替監視リスト(中国、ドイツ、マレーシア、シンガポール、台湾、ベトナム)から、対米貿易黒字第5位の日本が外れた。中国・台湾・韓国という地政学的危険地帯に集中しているハイテク製造業の産業集積を安全な日本に移転するしかない、という覇権国米国の国家戦略遂行の手段が、この超円安の背骨にあると考えざるを得ない。
いささか陰謀論めいているところもあって完全には頷首しずらいところもあるのですが、ひとつの見立てとしては非常に面白いです。そもそも為替というのは純粋にファンダメンタルズだけで決定されるのではなく、国際政治経済によって大きく左右されてきたという歴史的経緯がありますから。
たしかに米国がハイテク製造業の産業集積を日本に移転させるという国家戦略を採った場合、円安は戦略遂行の絶対条件となります。なぜなら、日本にハイテク製造業を集積した場合、円安によって製造コストを相対的に下げなければ、米国は安価にハイテク製品を調達することができないからです。
そして、この円安によって日本は「製造業立国として、サービス(観光)立国」として大復活するのだとか。だから「日本は今の円安の僥倖を享受するべきであり、間違っても円高誘導等、無駄な抵抗をするべきではない」と武者先生は指摘します。
さて、円安が米国の国家戦略に基づくものだとすると、投資家としての対応は、やはり株式への投資ということになります。この点に関しても武者先生は別のリポート「楽観論のすすめ~楽観論には道理があり、人を幸せにする~」の中で次のように書いています。
当座に必要としない資金のかなりを株式に振り向けるべきでしょう。日本株のインデックス投資を続けることで10年の間に財産を何倍かに増やすことができるでしょう。他方で将来を考えようともせず、安易な預金で資産を運用すれば5年経っても10経っても1は1のままです。極端な財産形成の差が生まれるのです。株式投資で運命が分かれる、と言うことは決して誇張ではありません。
武者先生は日本株インデックスへの投資を推していますが、私はこれに海外株式インデックスへの投資も加えたいと思います。なぜなら、円安が続くなら海外資産への投資は為替差益の面でも大いにメリットがあるからです。いずれにしても「株式投資で運命が分かれる」という指摘は、重く受け止める必要があるような気がします。
【スポンサードリンク・関連コンテンツ】