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2023年12月10日

「ロイドフットウェア シューメーカー」(Cシリーズ)を忖度なしでレビュー

 

「Lloyd Footwear」といえば日本で開発した木型を使って英国の有名革靴メーカーで委託生産するというユニークなブランドとして革靴好きの間で有名です。そのロイドフットウェアが2023年から廉価ライン「Lloyd Footwear SHOEMAKER EST1972」(Cシリーズ)の販売を開始しました。

Lloyd Footwear SHOEMAKER EST1972(Lloyd Footwear公式ブログ)

このほど試しに購入してみたので忖度なしでレビューしてみたいと思います。

ロイドフットウェアは日本のブランドですが、生産はクロケット&ジョーンズやチーニー、バーカーといった英国の高級革靴メーカーで委託生産していることが有名で、日本企画&英国生産というユニークなブランドです。革靴好きの間では日本人の足に合った英国靴ということで非常に人気があります。

そのロイドフットウェアが23年にローンチした廉価ラインが「シューメーカー」(Cシリーズ)です。英国ではなくインドやトルコ、スペインなど生産コストが安い国のメーカーで委託生産することでグッドイヤーウェルト製法の本格革靴でありながら2万円台の価格を実現しています。現在、ビームスやユニバーサルランゲージなどで販売されており、ちょっと気になっていました。たまたまユニバサルランゲージから5500円割引のクーポンをもらっていたので、これを使って試しに1足購入してみました。購入したのは黒のホールカット。生産国はインドです。はたしてインド製のロイドフットウェアがどういったクオリティなのかレビューしてみます。

まず外観。これはなかなか格好が良いです。インド製ながら英国靴らしいフォルムとなっており、グッドイヤーウェルト製法ならではのコバの存在感も迫力がある。出し縫いが踵部分にも施されているので、もしかした360度グッドイヤーウェルト製法なのかもしれません。これも英国靴らしい質実剛健なイメージを醸し出しています。また、アウトソールはラバー製ですが、やはり英国製のダイナイトソールが採用されていて高級感があります。

ただ、細かに見ていくといろいろと問題点が見えてきます。まずアッパーの革質。いちおうカーフレザーとの触れ込みでしたが、かなりグレードの低いカーフが使われているようで非常に硬い。リーガルやシェットランドフォックスなど日本の革靴メーカー・ブランドが使っている国産キップの方が柔らかいぐらい。カーフでもこれだけ硬いと履きジワもあまり良い状態になりません。また、顔料塗布など表面加工がかなりされており、カーフらしい自然な風合いにも欠けます。

ライニングはフルレザーなのは良いとして、やはり革質がいま一つ。おまけにこちらも顔料厚塗りです。また、踵からつま先まで一枚革のインソック(中敷き)が貼られているため、インソールの材質は不明。履いた感じではレザーではなく3万円未満の革靴で一般的なパルプ材や不織布シートかもしれません。パルプ材や不織布シートがむき出しの状態と比べればレザーのインソックがあることで履き心地は良くなりますが、やはり一枚革のインソールと比べると格段に落ちます。

もうひとつ問題なのが縫製。ステッチなどは一見すると問題ないように見えるのですが、よく見ると始末に雑なところがあり、欠点ではないかと思えるような乱れもありました。品質基準の厳しい日本の革靴メーカーなら、おそらく工場出荷前の検品を通らないと思います(もちろん革靴、とくに海外製は個体差が大きいですから、私が購入したものが“ハズレ”だっただけの可能性はあります)。

一方、優れた点として挙げたいのは、やがり木型。フィット感が良く、とくに踵部分のホールド感が素晴らしい。日本人は欧米人と比べて踵が小さいため、欧米製の革靴はどうしても踵のホールド感が弱いもの多いのですが、さすがロイドフットウエアは日本人の足に合わせて木型を開発しているだけのことはあります。また、土踏まずの部分がけっこう絞られていることも評価できます。ラバーソールを採用しながらこれだけ土踏まずの部分を絞り込んだデザインは珍しく、かなり“攻めた”デザインだと言えるでしょう。

それでは「ロイドフットウェア シューメーカー」(Cシリーズ)は“買い”なのかどうか。結論から言うと、プロパー価格で買う必要はないと思います。例えばユニバーサルランゲージでのプロパー価格は2万4200円でしたが、もう1万円から5000円多く出せばリーガルやスコッチグレイン、ユニオンインペリアル、バーウィックといったメーカーのきちっとした本格革靴を買うことができます。それこそユニバーサルランゲージなら3万円台のユニオンインペリアルの別注品を買った方法が良いでしょう。また、革靴は在庫リスクの大きい商品ですから頻繁にセールが行われています。セールを上手く活用すれば4万円台から3万円台の本格革靴でも2万円台で購入することができます。東立製靴の「ショーンハイト」ならプロパー価格でも2万円台からあります。どうしてもロイドフットウェアの靴が欲しいなら、英国製の入門ラインである4万円台の「Vシリーズ」を購入した方が最終的な満足度は高いと思う。

では「ロイドフットウェア シューメーカー」(Cシリーズ)はまったく“買ってはいけない”のかというと、さすがにそこまでは言いません。例えばセール対象になったり(私のように)割引クーポンがあって、1万円台で購入することができるなら十分に“買い”です。基本的に1万円台で売られている革靴にまともな物はありませんから、それらと比べると「ロイドフットウェア シューメーカー」は明らかに本格的です。ロイドフットウェアの優れた木型を体験できるだけでもメリットは大きい。さすがに1軍入りは難しいけれども、雨の日用など2軍メンバーとしては十分に活躍してくれるはずです。

以上が「ロイドフットウェア シューメーカー」(Cシリーズ)を実際に購入しての感想です。もう少し履き込んで足に馴染んでくれば印象も変わるのかもしれませんが、当面は2軍メンバーとしてちょっと足元の悪い日などに愛用していこうと考えています。そして、とにかく木型は素晴らしいですから、今度は英国製の「Vシリーズ」が欲しくなってしまったのでした。もしかしたら、これこそが「シューメーカー」(Cシリーズ)を出したロイドフットウェアの狙いかもしれません。

【ご参考】
スーツスクエア(ユニバーサルランゲージ×スーツカンパニー)は、ロイドフットウェアシューメーカー(Cシリーズ)のほかにユニオンインペリアルやジャランスリワァヤ、コールハーンなど革靴メーカーの別注品を扱っており、意外と狙い目です。ネットからも購入できるので気になる人はいろいろと探してみてもいいでしょう。スーツスクエアオンラインストアPR




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