遅ればせながらですが、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の2023年度第2四半期(7~9月)運用状況が発表されたので定例ウオッチです。2023年7~9月の期間収益率は+-0.31%、帳簿上の運用損益はマイナス6832億円でした。市場運用開始来の収益率は年率+3.91%となり、運用資産額は219兆3177億円となっています。
2023年度第2四半期運用状況(速報)(GPIF)
2023年7~9月は、物価上昇率の高止まりを背景に米国連邦準備制度理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)などが利上げを継続し、日本銀行も長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)の運用を柔軟化したため、主要国の長期金利は上昇(債券価格は下落)しました。GPIFの運用もこの影響を受け、資産別リターンを見ると国内債券が-2.97%、外国債券が-0.79%となっています。
ただ、金利上昇を背景に外国株式も現地通貨ベースではそれなりに下落しているのですが、円安で円換算価格が押し上げられており、外国株式のリターンは-0.10%にとどまっています。また、国内株式は+2.49%と堅調。これが他の資産カテゴリーの下落をある程度カバーしたことになります。結局、当四半期もGPIFの基本戦略である国際分散投資が効果を発揮したということです。国内と海外、株式と債券、外貨と円貨、これらに分散して投資することで一方的にダメージを被るリスクを低減しているわけです。こういったところが、私が常々“GPIFの運用は健全だ”と言う理由です。
また、今回も債券価格の下落がリターンに大きくマイナス寄与しているわけですが、やはり“債券も安全資産ではない”ということをよく示しています。国内債券と言えども、それが安全資産となるのは売却せずに満期まで保有できる個人投資家だけです。年金基金のように継続的に取り崩しが発生する機関投資家にとっては、時価での売却が常に発生するため、債券もまたリスク資産となるわけです。だからこそ株式にも分散投資する必要があるのであり、よく言われる「国の年金資産は国債だけで安全に運用するべき」という意見が完全な机上の空論であることが分かります。
現在もGPIFの運用は健全に行われていることが確認できました。引き続き頑張って欲しいと思います。
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