2024年から新しいNISA制度がスタートします。非課税投資枠が拡大され、非課税期間も恒久化されるなど大幅な制度拡充となります。それだけに新NISAは旧NISAからの変更点が大きく、活用するためにはちょっと本腰を入れて制度を研究する必要があります。その際に初心者にとっても心強い入門書として、竹川美奈子さんが『大改正でどう変わる? 新NISA徹底活用術』を刊行してくれました。いかにも竹川さんらしい“かゆいところに手が届く”内容になっています。
本書は、第1章で新NISAの制度設計についてかなり初歩的なところから解説しており、第2章では「つみたて投資枠」でインデックスファンドを使った国際分散投資を中心に新NISAの活用法について丁寧な説明がなされています。既にインデックスファンドによる積立投資を実践している人にとっては既知の内容ですが、新NISAをきっかけに、これから積立投資による資産形成を始めようとしている人にとっては、けれんみがまったくなく、非常に親切な内容です。
そして本書の最大の眼目は第3章「Q&A 丸わかり!新しいNISA」です。これが実にかゆいところに手が届く細やかさ。例えば「金融機関をどうするか」という項目では、旧NISAを使っている人が新NISAを利用する際の細かな注意点とアドバイスが満載でした。個人的には旧NISAと新NISAの口座を別の金融機関で開く場合はどうなるのかといった点が非常に参考になりました。何しろ旧NISAが始まった時と現在では証券会社のサービスの内容が大きく変わっています。これまで旧NISA口座を開設していた証券会社ではなく、別の証券会社で新NISA口座を開きたいという人は多いのではないでしょうか。
「商品の選び方と活用法」の項目も興味深いQ&Aが並んでいます。例えば「NISAで保有する投資信託が繰上償還されたらどうなるか」「親がNISA口座で保有している商品を相続する場合はどうなるか」といった具合で、案外と盲点になっていることにも目配せしています。また、第3章の最後に載っているコラム「NISAとiDeCo(個人型確定拠出年金)はどう使い分ける?」は、iDeCoに加入している人にとって必読。ここで竹川さんが提案している考え方に全面的に賛同します。
第4章では、ジュニアNISAを含めて旧NISAが新NISA制度開始後にどういった扱いになるのかが、金融機関の手続きも合わせて丁寧に解説されています。これも旧NISAを利用している人にとって非常に有益な情報です。
やはり本書の大きな特徴は、新NISAから新しく投資を始める人だけでなく、既に旧NISAを使っている人に対する目配せが徹底していることです。それは竹川さんの既存の読者たちでしょう。そういった既存の読者に向けて丁寧なフォローアップを続けているところに竹川さんの誠実さが感じられ、非常に好感を持ちました。そうした点も含めて、すべての人に勧めることのできる入門書だと断言します。
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