インデックスファンドの低コスト化が進む中で、新たな課題となっているのが実質的に同じ(=マザーファンドが同じ)インデックスファンドに異なる信託報酬が設定されている“一物二価問題”です。この点に関して、目立たないけれども大きな動きが2月にありました。ニッセイアセットマネジメントが確定拠出年金専用ファンドである「DCニッセイ外国株式インデックス」の信託報酬を引き下げることで“一物二価問題”の是正に動いているのです。
「DCニッセイ外国株式インデックス」は、SBI証券の個人型確定拠出年金のオリジナルプランに採用されているため、保有や積立している人も多いことでしょう。信託報酬(税込)はこれまで0.154%だったものが、2月21日から0.1023%に引き下げられました(交付目論見書)。
0.1023%という信託報酬年率は、ニッセイAMが運用する先進国株式インデックスファンドで信託報酬がもっとも安い「〈購入・換金手数料なし〉ニッセイ外国株式インデックスファンド」と同じです。つまり、ニッセイAMはマザーファンドが同じで実質的に同一ファンドである「DCニッセイ外国株式インデックス」と「〈購入・換金手数料なし〉ニッセイ外国株式インデックスファンド」の信託報酬を低い方で統一し、インデックスファンドの“一物二価問題”を是正したわけです。
近年、インデックスファンドの低コスト化が進んだことで過去の設定された実質的に同じファンドとの信託報酬の差が大きくなっているという“一物二価問題”は金融庁も問題視するなど大きな課題となっていました。そうした中、既にアセットマネジメントOneや野村アセットマネジメントなどが既存のインデックスファンドの信託報酬を引き下げることで実質的に同じファンドの信託報酬の差を縮めようとする動きが出ていました。しかし、最安値の信託報酬に統一する動きには至っていませんでした。
そうした中、DC専用ファンドという特集性はあるにしろ、ニッセイAMは実質的に同じファンドの信託報酬を最低水準のラインで統一しました。これこそ“一物二価問題”の是正策として受益者の利益を最重視したもっとも正しいやり方です。受益者への忠実義務(フィデューシャリーデューティー)を全うしていると言えます。
日本では長らくファンドの新規設定によってコスト競争が進められるといういびつな状態が続いたことで、ひとつの運用会社が実質的に同じインデックスファンドをいくつも運用し、信託報酬もファンドごとに大きな差があるという“一物二価”どころか“一物多価”の状態にあります。この問題を解決する方法として、ファンドの統合と信託報酬の統一があるのですが、ニッセイAMはまず信託報酬の統一を正しいやり方で実行しました。こうした動きを、ぜひ他の運用会社も見習うべきです。そして、やはり先陣を切って動いたニッセイAMを高く評価するべきでしょう。
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