年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の2022年度第3四半期(10~12月)運用状況が発表されたので定例ウオッチです。2022年10~12月の期間収益率は-0.97%、帳簿上の運用損益はマイナス1兆8530億円でした。市場運用開始来の収益率は年率+3.38%となり、運用資産額は189兆9362億円となっています。
2022年度第3四半期運用状況(速報)(GPIF)
四半期ベースでは4期連続でのマイナスリターンとなっています。ただ、市場環境の悪さを考えると、分散投資の効果もあって健闘していると言えます。それは同時に、年金運用に対してよく分かっていない人がときたま主張する「国債100%運用論」が破綻していることを明確に示す結果にもなっています。
2022年10~12月は、米国でのインフレ高進がピークアウトの兆しを見せつつあることから、米国連邦準備制度理事会(FRB)による更なる金融引き締め観測が後退したことで米国株は現地通貨ベースでは上昇しています。一方、日本銀行は現在の金融緩和政策の中で許容している長期金利の変動幅を拡大する決定を下し、事実上の金利引き下げに動くなど金融緩和からの転換の兆しを見せています。このため日本の長期金利が上昇(債券価格の下落)し、円高も進みました。
これがGPIFの運用成績に大きな影響を及ぼしています。GPIFのポートフォリオの資産カテゴリー別騰落率を見ると、国内株式が+3.24%と検討する一方で、外国株式は-0.05%にとどまりました。円高によってリターンが相殺されています。さらに厳しいのが債券。国内債券は-1.73%と国内債券としては大幅な下落です。外国債券も下落し、円高も加わって-5.33%と大幅なマイナスリターンとなっています。
つまり、現在の運用におけるマイナス要因の大部分は、金利上昇による債券価格の下落だということです。それでもGPIFが全体としては-0.97%の期間収益率で踏みとどまっているのは、やはり債券と株式という異なる資産カテゴリーに分散投資しているからにほかなりません。
そして、年金運用に関する重要なポイントを教えてくれます。GPIFの運用に対しする批判として「年金原資をリスクのある株式で運用するのはケシカラン。安全な国債100%で運用しろ」といったことを言う人がたまにいるのですが、こうした「国債100%運用論」が破綻しているということを現在の市場環境は教えてくれます。長らく続いた金融緩和によって債券価格は高水準になっていましたから、現在のような金利上昇局面になると、債券こそリスクが高まるのです。
だからこそ、株式と債券の両方に分散投資するという方法が意味を持つわけです。そういう意味で、GPIFのポートフォリオの資産配分というのは、じつにオーソドックスでであり、理にかなっている。それは凡庸だけれども、健全です。そういった凡庸さというのは、年金のように大切な資金を運用する上では、偉大なことなのです。
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