既にニュースになっていますが、公募株式投信(除くETF)の運用会社別残高で2022年10月末に三菱UFJ国際投信が野村アセットマネジメントを抜いてトップに立ちました。三菱UFJ国際投信がトップに立つのは2011年以来11年ぶりだそうです。その11年前と比較してモーニングスターが面白い記事を載せていました。
記事が指摘するように、11年前に三菱UFJ国際投信を牽引していたのは、毎月分配型投信の代表格だった「グローバル・ソブリン・オープン(毎月決算型)(通称:グロソブ)」でした。2008年8月には5兆7685億円という純資産残高を記録しています。グロソブのような毎月分配型投信を求めたのは、主に高齢層の個人投資家でした。
そして現在の三菱UFJ国際投信を牽引しているのは、超低コストインデックスファンド「eMAXIS Slim」シリーズ。22年10月末段階でシリーズ全体での純資残高は3兆4066億円に達しています。こちらは主に現役世代による積立投資によって残高を増やしています。
三菱UFJ国際投信の11年間の変化は、投資信託の役割が大きく変化しつつあることを象徴的に示しています。かつては高齢層のストックを運用することが主な目的だったのに対して、現在は現役世代の資産形成のツールへと変化したわけです。日本の投資信託もあきらかに別のステージに入りつつある。そして、それは運用会社の事業戦略としても正しい判断だったとも言えます。なぜなら、高齢者の資産はいずれ先細るのに対して、現役世代の積立は、文字通り積み上がっていくものだからです。どちらの市場に将来性があるのかは明白でしょう。
ただ、こうした変化も依然として道半ばです。なぜなら、超低コストインデックスファンドの登場によって、信託報酬は11年前の15分の1以下の水準にまで低下しました。だからこそ超低コストインデックスファンドはこれだけの資金を集めることができたわけですが、一方でモーニングスターが指摘するように運用会社の収益という面では厳しい状況にあることもまた事実です。
つまり、運用会社からすれば現在の超低コストなインデックスファンドの運営というのは、依然として将来の市場に向けた先行投資であるということです。本当の意味で超低コストインデックスファンドがビジネスとして自立するには、それこそ10兆円を超える規模にまで成長する必要があるわけです。
そして、それは決して不可能な数字ではないでしょう。記事にあるように、日本の個人金融資産は約2000兆円。このうち過半数の1000兆円超が現預金です。この1%が投資信託に移れば、それだけで10兆円です。10%なら100兆円超。これは決して不可能な数字ではありません。
だから、日本のインデックスファンドは純資産残高が10兆円を超える規模を目指さなければならないということ。そうなった時こそ、本当に日本の投資信託が従来とは異なる次元に移行したことになる。
モーニングスターの記事の最後に「運用会社会社をはじめ投信の販売会社等の投信関係者は、現金・預金の何%を投信市場に移動させることができるのかということに真剣に取り組んでいる。その努力が無駄に終わらないよう、継続的な取り組みが期待される」とありますが、まったくその通りです。そして、それは運用会社の事業の将来もかかっているのです。
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