個人型と企業型を合わせた確定拠出年金(DC)加入者数が1000万人に迫っているそうです。
DC加入者数は1,000万人に迫る(ニッセイ基礎研究所)
日本の総就業者数は約6600万人ですから、ほぼ6人に1人がDCに加入していることになります(高齢者雇用などを除く現役世代だけで見ると、この割合はさらに高くなるでしょう)。いよいよ“国民総投資家時代”への萌芽が目に見える形で表れ始めたと言えそうです。
ニッセイ基礎研究所のレポートにあるように、個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入対象者が拡大されたことや、企業年金も確定給付(DB)からDCへの移行が進みました。この結果、2021年10月時点でiDeCo加入者は約220万人となり、企業型DC加入者との単純合計(重複加入含む)は1000万人に迫るそうです。
まさに「高齢期の生活資金を個人自らの責任で運用する時代の到来を象徴する変化」と言えるわけです。もちろん、やはり記事が指摘するように実際は定期預金や保険など元本確保型商品での運用を選択する人が多いのも実情ですから、まだまだ小さな一歩にすぎません。それでも、やはり“国民総投資家時代”の萌芽だと言えます。
こうした構造変化は、今後の社会を大きく変える可能性があります。例えば現在の日本ではあいかわらず“投資・資産運用=虚業”といった印象を持っている人が多く、それに付和雷同する形で政治家も投資家イジメ的な政策を提唱したり実行したりしがち。しかし、国民のほとんどが運用によって老後資金を用意する時代になればどうなるか。恐らく政治の姿勢も変わります。
実際に米国では国民の多くが401Kなど確定拠出型年金で老後資金を用意しています。しかも運用商品は株式中心。このため米国では株価の下落は国民の老後不安に直結します。するとどの政党の政治家も株価が下落するような政策を採りません。だから共和党と民主党の間で政権交代が起こっても、中身の濃淡はあっても基本的に株価の維持・上昇を目指した経済政策が実行されます。言い換えると、こうした経済政策上の大前提が共有されているからこそ、国民も安心して政権選択ができ、それが頻繁な政権交代を可能にしているわけです。
こうしたことを考えると、日本でもDCの普及によって国民の大部分が老後資金のために資産運用するようになれば、いまの日本でもてはやされるような“トンデモ経済政策”は支持を失うはず。政治の構図も変わってくるかもしれません。そういった大きな変化への萌芽を、DC加入者1000万人という数字が示しているような気がします。
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