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2020年5月2日

SBIが野村證券を超える日



まだ確定はしていませんが、SBIホールディングス傘下のSBI証券とSBIネオモバイル証券を合わせた口座数が野村證券を上回った可能性が出てきました。

SBIHD:口座数が野村証抜き最大となったもよう、コロナ禍伸ばす(ブルームバーグ)

野村證券と言えば長らく日本最大の証券会社として良くも悪くも証券業界に君臨してきたわけですが、どうやらその構図も変革期を迎えるかもしれません。SBIが野村證券を超える日、それは日本における投資業界のあり方も大きく変わることを意味するような気がします。

野村證券と言えば日本における証券会社の代名詞的存在で、かく言う私も口座を持っていたりします。良くも悪くも対面型による圧倒的な営業力で日本の証券業界をリードしてきました。一方で、ときには強引ともいえる営業手法や、少額投資家よりも大口投資家を重視する営業姿勢もまた、日本の投資業界の性格に大きな影響を与えてきたとも言えます。その特異性は、例えばOBによる“異常な”武勇伝が記述される『野村證券第2事業法人部』などを見るとよく分かります。



一方、SBIホールディングスのSBI証券はインターネット証券最大手として手数料の低コスト化を主導するなどで証券業界での存在感を高めてきました。それによって、記事にあるように口座数で野村證券に迫る地位になっていたのですが、今年の“コロナ・ショック”で新規口座開設が一気に拡大したというのは、やはりSBI証券の性格をよく表しています。非常ににアグレッシブで、そして若い投資家が口座を開いているのでしょう。また、SBIホールディングスは北尾吉孝社長の特異なキャラクターが色濃く影響しているグループでもあります。

このように、ある意味で対照的な両社が、口座数でトップ座を入れ替わるというのは非常に象徴的な出来事に感じます。いよいよ野村證券に代表されるような店頭・対面中心の従来型証券営業から、ネット証券への本格的なシフトが起こるのではないかということです。新型コロナウイルスによって対面型証券会社の店頭営業が一時的に縮小・休止に追い込まれたことも、こうした動きに拍車をかけたとも言えます。

恐らく、この流れは今後も早まることはあっても止まることなないと思う。なぜなら、野村證券に代表されるような対面型証券会社とSBI証券のようなネット証券を比べると、最大の違いは顧客の年齢層です。対面型証券は大口投資家を重視するがゆえに、どうしても顧客は高齢層が多くなる。一方、ネット証券は低廉な手数料を武器に小口投資家を集めてきたことで自然と顧客の年齢層が若くなるのです。

このまま年月が経てばどうなるか。いま対面型証券で株式を保有している高齢の投資家はいずれ亡くなり、資産は子供たちに相続されていきます。その相続人が引き続き対面型証券で運用を続けるでしょうか。もしかしたら、相続人は既にネット証券に口座を持っているかもしれません。そうなると、相続した資産も既に自分が使っているネット証券の口座に移管するのが自然な流れでしょう。

こうしたことを考えると、SBIが口座数で野村證券を上回ることの重大な意味が見えてきます。たしかに預かり資産額では、まだ野村證券など対面型証券の方が圧倒的に多い。しかし、その預かり資産にいつでもリーチをかけることができる位置にSBI証券などネット証券は立ったわけです。おそらくそこで証券会社のビジネスモデルの主流も大きく変わるでしょう。その意味で、SBIが野村證券を超える日というのは、日本の証券業界の地殻変動がいよいよ顕在化する第一歩だと感じます。

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