年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の2019年度第3四半期(10~12月)運用状況が発表されましたので定例ウオッチです。10~12月の期間収益率+4.61%、帳簿上の運用益は+7兆3613億円でした。市場運用開始来の収益率は年率+3.23%となり、運用資産額は168兆9897億円となりました。
2019年度第3四半期運用状況(速報)(GPIF)
世界的に株式相場が好調だったことでGPIFの運用資産も大幅に増加し、資産総額は過去最高となっています。そうなるとメディアではとくに話題にならないというのも毎度のことです。ただ、収益の増減に関わらずGPIFの運用結果に一喜一憂するべきでもありません。なぜなら、年金積立金の役割は、あくまで年金財政における“緩衝材”だからです。
2019年10~12月は世界的に株式相場が好調だったことで保有資産別では国内株式が+8.59%、外国株式は+9.76%となりともに大幅なプラスリターンとなりました。一方、国内債券は-1.01%とマイナスリターンでした。利子・配当収入は8953億円となり、あいかわらず安定収入として収益に寄与しています。引き続き国際分散投資が効果を上げており、健全な運用が行われていると言えるでしょう。
さて、GPIFの運用総額は過去最高となるなど好調に推移しているのですが、これを過剰に評価することは評価額が大幅に減ったときに大騒ぎするメディアと同様に公的年金制度に対する評価としては不適当です。なぜなら、GPIFの運用というのは、年金財政のごく一部を構成する要素にすぎないからです。この点に関して経済コラムニストの大江英樹さんが端的にまとめてくれています。
「年金積立金の減少」を騒ぎ立てる人が陥っているひどい勘違いとは(ダイヤモンド・オンライン)
大江さんが指摘しているように、あくまで年金財政における“バッファー(緩衝材)”だからです。この意味は大江さんは家計に例えると“貯金”のようなものだとして、次のように説明しています。
現在、公的年金の収支を見ると、収入と支出はいずれも50兆円前後である。これを家計に例えればわかりやすい。年収500万円の家庭が、同じぐらいの支出をしているとしよう。ところがある年に、旅行に行ったり、大きな買い物をしたりして、仮に30万円の赤字が出たとする。ところがこの家には約1980万円の貯金があるので、足りない30万円はここから出せば問題ない。こうした年金財政の仕組みを理解していれば、やはりGPIFの運用結果に一喜一憂することがあまり意味のないことだということが分かります。
逆に支出を節約して、20万円余ったとしたら、それを貯金に入れておけばよい、といった具合である。つまり、「年金積立金」は年金制度にとっては“貯金”であり、バッファー(緩衝材)とでも言うべきものなのである。
では、なぜお前はGPIFの運用状況をブログで定例ウオッチしているのかと言われてしまいます。それは、期間収益率がマイナスになった時だけ大騒ぎする大手メディアへのエクスキューズがあるののですが、やはり最大の目的な運用自体が健全に行われているかをチェックするためです。健全に運用するというのは収益がプラスかマイナスかは関係ありません。あくまで年金運用のセオリーに沿った国際分散投資が安定的に行われているかを確認することです。それはGPIFの受益者である国民の務めだと思うのです。
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