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2019年12月7日

投資信託の銀行窓販も転換期―購入時手数料無料時代の収益モデルは



日本で投資信託が現在のように幅広く販売されるきっかけになったのは1998年に銀行の窓販が解禁されたことでした。その功罪はともに大きいのですが、少なくとも投資信託の認知度向上と普及に一定の役割を果たしたことは間違いありません。実際に窓販解禁以来、2018年まで年間資金流入超を維持してきました。ところが2019年はどうやら資金流出超に転じそうな気配です。

投信窓販解禁後、初の年間資金流出超となるのか(東証マネ部!)

背景にあるのは投資信託市場の構造変化ではないでしょうか。そしてその構造変化がさらに加速しそうな気配です。ここにきてネット証券を中心に投資信託の購入時手数料は廃止される流れになっています。購入時手数料無料時代が本格的に到来すれば、銀行窓販もさらなる転換期にさらされることになるでしょう。

記事にあるように、投資信託の窓販が解禁されて以降の日本の投資信託の特徴を振り返ると、いつも新しいテーマや運用手法のファンドが次々と登場し、激しく入れ替わっていることがあります。なぜそんなことになったのかと言えば、それは銀行・証券会社など販売会社が強力な営業活動を実施したからにほかなりません。そして記事は触れていませんが、こうした激しいトレンド変化のインセンティブになっていたのが購入時手数料の存在であり、その中心的役割を果たしたのが銀行窓販でした。

銀行窓販がターゲットにしたのは退職金などでまとまった資金を持つ高齢者でした。投資に不慣れな高齢者に対して、次々と新しいファンドを紹介し、乗り換えを勧めることで手数料収入を得てきたのです。いわゆる“回転売買”の誕生です。これによって銀行の収益構造は大きく変わります。いまや銀行にとって窓販の投資信託から得る手数料が収益で大きな位置を占めるようになっています。

しかし、こうした状況も転換を余儀なくされそうです。ひとつは金融庁などが「フィデューシャリー・デューティー(顧客本位の業務運営)」の推進を掲げ、回転売買を問題視するようになったことがあります。このためかつてのように新規ファンドの購入を勧めるという営業手法が使いにくくなりました。一方で若い世代は窓販ではなくネット取引でファンドを少額ずつ購入するのが主流となります。

高齢者からの大口の資金流入が減り、逆に取り崩し段階にどんどんと入っていきます。新規に投資を始める若年層は少額での積立投資が中心ですから、資金流入の絶対額は大きくありません。こうした過渡期に現れる一時的な現象が年間資金流出という形で表れているように感じます。

さらに銀行窓販にとっては転換期が続きます。購入時手数料が廃止される流れが強まりそうだからです。ネット取引では購入時手数料無料が当たり前の時代となったとき、窓販はどのような存在意義を見出すことができるのでしょうか。こうしたことを考えると、投資信託の購入時手数料無料時代に銀行の窓販は新たな収益モデル見出す必要が出てくるわけです。

とはいえ今後、投資信託の銀行窓販がなくなるとは思いません。それどころか、購入時手数料が無料となって初めて本当の意味で窓販の存在意義と収益機会が見えてくるのではないでしょうか。そのことにいち早く気づき、たとえ一時的な生みの苦しみがあったとしても事業構造を展開できた銀行の窓販は、やはり生き残ることができるでしょうし、さらに銀行にとって重要な収益源へと生まれ変わるチャンスもあるように感じています(この点に関しては別の機会に論じたいと思います)。



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