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2019年10月2日
マイナス利回りの国債は買えない―GPIFが為替ヘッジ付き外国債券を国内債券扱いに変更
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)がこのほど、2019年度計画を変更し、ポートフォリオの資産構成割合で為替ヘッジ付き外国債券を国内債券扱いに変更すると発表しました。
平成31年度計画の変更に係る髙橋理事長コメント(GPIF)
本来なら国内債券を買い増して資産配分を基本ポートフォリオの資産構成割合に沿ったものにリバランスする必要があるのですが、マイナス利回りの国債が増えたため為替ヘッジ付き外国債券で国内債券を代替するということです。苦肉の策なのですが、しかたないという感じもあります。年金基金のように超長期で運用する機関投資家にとってマイナス利回りの債券など買うべきではないからです。
GPIFは基本ポートフォリオとして国内債券35±10%、国内株式25±9%、外国債券14±5%、外国株式25±8%の資産構成割合で運用を行っています。ところが2019年6月末での実際の資産配分を見ると外国債券は18.05%となり、乖離許容幅を含めた上限に達しつつあります。一方、国内債券の構成割合は26.93%となり、こちらは乖離許容幅の下限に達しつつあります。
このため本来なら外国債券を売却して国内債券を買い増すリバランスを実施するべきなのですが、そこで問題になるのが国内債券の利回り。国内債券は日本国債が基本ですが、日銀によるマイナス金利政策によってマイナス利回りとなる国債が増加しています。債券価格を含めたトータルリターンがプラスのときに機動的に売却できるアクティブ運用の機関投資家と異なり、年金基金は超長期の保有が基本となり、満期償還まで保有するケースも少なくありません。そしてマイナス利回りの債券というのは満期償還まで保有すると確実に損をする資産です。
確実に損をする資産をポートフォリオに組み込むことができないというのは当然の判断です。そもそも債券投資というのは「金利」に対して投資することですから。その意味でここ数年、GPIFがもっとも頭を痛めていたのは、じつは国内債券への投資の問題だったはずです。このことはブログでかなり以前から指摘してきましたが(関連記事:GPIFの2017年7~9月の運用成績は+2.97%―悩みは国内債券への投資か)、やはりといった感じです。
そして今回、為替ヘッジ付き外国債券を乖離許容幅管理上、外国債券の資産構成割合から控除し、国内債券の資産構成割合に算入することになりました。為替ヘッジ付き外国債券は文字通り為替リスクがないので国内債券と近い値動きとなります。これでマイナス利回りの国債に投資できないことを補う戦略です。ただし、資産区分上の位置付けや資産クラス別の収益率などは為替ヘッジ付き外国債券を引き続き外国債券として扱い、リスク管理を徹底するとしています。まさに苦肉の策ですが、現在の経済情勢を考慮すると妥当な対策と言えるでしょう。
ただ、新たな問題も発生します。為替ヘッジ付き外国債券に投資する際に生じる為替ヘッジコストをどうするかです。為替ヘッジコストは通常、異なる通貨間の金利差で理論的に決まるのですが、実際の取引では需給バランスなどから先物価格と現物価格が乖離がすることによって生じる「ベーシスコスト」が加わります。現在、ベーシスコストがかなり高止まりしていますから、これがGPIFの運用にどのように影響するのか気になるところです。
為替ヘッジ付き外国債券でマイナス利回りとなっている国内債券を代替するという戦略は、私も以前にインデックス投資で実行したことがあります。やはり為替ヘッジコストの上昇が気になり、結局は利回り自体を捨てて現預金や個人向け国債に逃避するようになりました。しかしGPIFのような巨大な資金を運用する機関投資家は、そういった方法が採れません(この点で個人投資家は有利なのです)。
はたしてGPIFの新しい運用戦略が成功するのか見守りたいと思います。為替ヘッジコストに関しても、世界最大の機関投資家としてのバイイングパワーを活用し、なんとか抑える対策を模索して欲しい。そのあたりも含めて引き続きウオッチしていきたいと思います。
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