カテゴリー
▼
2019年9月11日
レオス・キャピタルワークスが「ひふみワールド」を新規設定―注目度は高いが様子見の要素も多い
「ひふみ投信」を運用しているレオス・キャピタルワークスが10月8日に日本を除く世界の株式を投資対象とするアクティブファンド「ひふみワールド」を新規設定します。
世界株ファンド「ひふみワールド」新規設定のお知らせ(レオス・キャピタルワークス)
既に「ひふみ投信」を通じて海外株式への投資も拡大している同社ですが、いよいよ本格的に世界株式アクティブファンドの運用に挑戦することになります。「ひふみ投信」を通じて受益者と強固なリレーションシップを構築している同社ですから、「ひふみワールド」の注目度も高いでしょう。ただ、しばらくは様子見した方がいいと感じる要素も少なくありません。
レオスのホームページには既に「ひふみワールド」新規募集の専用ページがアップされています。それによると「ひふみワールド」の投資対象は日本を除く世界株式で為替ヘッジはしません。信託報酬は税抜1.48%。購入手数料や解約時の信託財産留保額はいずれもありません。ファンドマネージャーはレオスの取締役運用本部長である湯浅光裕氏が担当します。
運用方針として「世界の成長企業に投資します」「守りながらふやす運用に挑戦します」「顔が見える運用」を掲げてています。このあたりは「ひふみ投信」の世界株式版という色合いが鮮明です。販売は直販のみとなり、長期保有者に信託報酬を一部還元する「資産形成応援団」(信託報酬一部還元方式)を採用しているのも「ひふみ投信」と同様です。
まだ目論見書が交付されていないので何とも言えないのですが、EDIENTにアップされた有価証券届出書によるとベンチマークは設定しないとのこと。ただ、これも「ひふみ投信」と同じですから、もしかしたら運用報告書では何らかののインデックスを参考指数として記載するのかもしれません(これはぜひ記載して欲しいと思います)。
レオスはニューヨークに拠点を開設するなど海外株式の調査体制を強化してきましたから、満を持して世界株式アクティブファンドに参入するということです。「ひふみ投信」で高い人気と受益者からの信頼を得ているレオスの世界株式アクティブファンドということで、注目度は非常に高いといえそうです。
ただ、設定すぐに購入するのは少し待って、しばらく様子を見た方がいいと感じる要素が多いというのが個人的な印象です。まず、信託報酬が税抜1.48%というのは高すぎます。いまや世界株式インデックスファンドに0.1%程度で投資できる時代です。アクティブファンドでもピクテ投信投資顧問の世界株式インデックスファンド「iTrust世界株式」の信託報酬は税抜0.89%です。
個人的にアクティブファンドと言えども信託報酬が1%を超えるようでは購入を躊躇してしまいます。そもそも「ひふみ投信」が支持された要因のひとつにアクティブファンドとしては相対的に信託報酬が低く、税抜1%未満だったことがあります。それをふまえても「ひふみワールド」の信託報酬は割高感が強いわけです。
もうひとつは、信託報酬が高いことが運用の足かせになるのではないかという懸念です。やはり1.5%近い信託報酬を取ってしまうと、相当に大きなリターンを上げないと市場平均に対して運用成績が大きく劣後してしまう危険性が高まるのです。私は、アクティブファンドこそ低コストでなければならないと常々指摘しているのですが、それはアクティブファンドの多くがインデックスに対してリターンが劣後する原因のひとつに信託報酬の高さによる自滅があると考えているからです。
そのほか、「ひふみ投信」で成功した「足で稼ぐ運用」が世界でもできるのかという課題もあります。やはり世界は日本と比べてはるかに広いからです。また、米国など世界の株式市場は日本の株式市場よりも効率化が進んでいる可能性があり、アクティブ運用における超過リターンの源泉である“市場の歪み”を見つけるハードルは高いかもしれません。
こうしたことを考えると「ひふみワールド」に設定直後から飛びつくのは控えた方がいいかもしれません。そもそも設定直後の投資信託を買ってはいけないというのは基本中の基本です。数年間は様子を見て、実際の運用実績を確認してから購入を検討するのがいいかもしれません。レオスの運用哲学などに共感して購入を検討している人も多いと思いますが、その場合はまず少額を購入(一種の“応援買い”)して、運用成績を見守るというのもありでしょう。私が買うなら、まずはそうします。
実際に購入するかは別にして、「ひふみ投信」での成功のノウハウを世界株式アクティブファンドでも実現できるのかは非常に興味深い点です。その意味でも「ひふみワールド」は注目度は高いファンドになるかもしれません。
【ご参考】
「ひふみワールド」は直販のみでの販売となります。口座はネットから無料で開設することができます。⇒ひふみ投信
【スポンサードリンク・関連コンテンツ】