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2019年2月1日

GPIFの2018年10~12月の運用成績は-9.06%―それでも運用は健全に行われている



年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の2018年度第3四半期(10~12月)運用状況が発表されましたので定例ウオッチです。10~12月の期間収益率-9.06%、帳簿上の運用益は-14兆8039億円でした。市場運用開始来の収益率は年率+2.73%となり、運用資産額は150兆6630億円となりました。

2018年度第3四半期運用状況(速報)(GPIF)

2018年10~12月は世界的にパニック相場の様相を呈していましたから、これぐらいのマイナス収益となるのは当然でした。ただ、-14兆円という数字にインパクトがあるので、さっそく一部のマスコミが騒ぎ出し、それに付和雷同する声も増えてきます。期間収益がプラスだとほとんど話題にもならず、マイナスの時だけ非難されるという、あいかわらず可哀そうなGPIF。そもそも超長期運用が前提の年金運用においてたった3カ月の期間収益などプラスだろうがマイナスだろうが何の意味もありません。運用の健全性をチェックするポイントは、もっと別のところにあるのです。

2018年10月以降は、まさに世界同時株安ともいえる展開となり、円高も加わってちょっとしたパニック相場でした。このためGPIFのポートフォリオも国内債券を除いて軒並みマイナス収益となりました。GPIFの髙橋則広理事長のコメントです。
2018年度第3四半期(10月~12月)は、世界経済と企業収益の先行きに対する懸念等から、投資家のリスク回避姿勢が高まり、国内外の株式市場が大幅に下落しました。一方で、安全資産とされた米国債や日本円へ資金を振り向ける動きが強まり、金利は米国を中心に低下し、為替は主要通貨に対して大幅な円高となりました。このような結果、10月から12月までの運用資産全体の運用実績はマイナス9.06%となり、市場運用を開始した2001年度からの累積収益額は56兆6,745億円(年率プラス2.73%)となりました。
年金のように巨額の資金を運用する場合、流動性の面から大半をパッシブ運用するしか方法がありません(アクティブ運用すると、自分の売買による価格変動で損をする)。このため市場自体が大きく下げると、年金運用のリターンも低下します。それでも正しく分散投資していれば、長期的にはリターンを得ることがで切る蓋然性が高いというのが、長年にわたって研究してきた先人たちが到達した一つの答えです。

このため短期間の収益率に一喜一憂するのは、ほとんど意味がありません。実際にGPIFの場合も市場運用開始来では56兆円以上もの収益を得ているわけですから。運用が成功しているかどうかの判断基準は、ここに置くべきです。同時に四半期ごとに運用報告することに意味がないのかといえば、それも違います。これには大きな意味があります。それは運用が健全に行われているかを国民がチェックする機会だからです。

では運用の健全性を見るためのポイントがどこにあるのかですが、それはポートフォリオの資産配分です。GPIFの場合、基本ポートフォリオとして国内債券35±10%、国内株式25±9%、外国債券15±4%、外国株式25±8%と定めています。この資産配分をきっちりと守って運用できているかが重要になる。そしてGPIFは四半期ごとにきちんとこの資産配分も報告しています。

2018年12月末段階でのGPIFのポートフォリオの資産配分は国内債券・短期資産34.58%、国内株式23.72%、外国債券17.41%、外国株式24.29%となっています。いずれも基本ポートフォリオの範囲内です。そして第2四半期(7~9月末)段階でも、やはりポートフォリオの資産配分は規定どおりでした。つまり、いつもきちんとリバランスできているということです。それは運用が健全に行われていることを意味します。

世界的にボラティリティが大きな運用環境が続きますが、こういったときに大事なのがきちんとリバランスをして資産配分を一定に保つことです。それがリスクを正しく管理するということであり、運用の健全性を支える。その意味では、依然としてGPIFによる運用は健全になされていると判断できます。

ところで、「そもそも年金資金をリスクのある株式で運用するのがけしからん。全額を国債で運用しろ」と言う人がいます。これは一つの見識ですが、同時に大きな問題も抱えます。この点に関して龍谷大学の竹中正治教授が素晴らしい論考を書いています。

リーマン級の株価下落で、公的年金の評価損は「40兆円」を超える それでも長期分散投資を続けるべき理由(マネー現代)

ポイントは以下の点です。
将来の国債の利息や償還金は誰が払うのか。それは将来の現役世代が税金で負担するしかない。
とすると、積立金なしの完全な賦課方式で将来の引退世代の給付金を将来の現役世代が全部負担する場合も、積立金を国債で運用してそれを将来の引退世代の給付金の支払いにあてる場合も、将来の現役世代が負担するという点では全く同じことになる。
違うのは将来の現役世代の負担の仕方が、年金資金の徴収の形をとるか、国債の利払いや償還のための税金の形をとるかというだけだ。従って日本国債で運用されている積立金は、世代間格差の補完としては何の役にもたたないのだ。
公的年金運用で、なぜ国内外株式と外国債券に投資する必要があるのか。それは国内債券100%で運用した場合、結局は将来世代から所得を奪うことに他ならないからです。はたしてそれで良いのか。公的年金が株式や外国債券に投資することを批判する人は、この問いに答える義務があるでしょう。



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