期間収益がマイナスになると大きなニュースになるのに、プラスだとあまり注目されないという可哀想な存在の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)。なのでこのブログでは意地でも定例ウオッチを続けます。このほど発表された2018年度第1四半期(4~6月)の期間収益率は+1.68%、帳簿上の運用益は+2兆6227億円でした。市場運用開始来の収益率は年率+3.18%となり、運用資産額は158兆5800億円となりました。
平成30年度第1四半期運用状況(速報)(GPIF)
2017年度第4四半期(18年1~3月)は世界的な株価軟調でマイナスリターンでしたが、当期は再びプラスに転じています。GPIFについてはいろいろと言われるのですが、基本ポートフォリオの資産配分は世界標準から見ても極めて穏当なものです。ですからインデックス投資初心者でポートフォリオの資産配分に悩んでいる人にとって、大いに参考になるのではないでしょうか。
2018年4~6月期は株式がやや盛り返したことと、円安が進んだことで主要資産クラス全てがプラスとなりました。とくに外国株式は+5.17%とポートフォリオ全体の収益を牽引しています。GPIFも髙橋則広理事長は次のようにコメントしています。
2018(平成30)年度第1四半期(4月~6月)は、国内外の総じて良好な経済指標や堅調な企業業績、米国における景気刺激策が相場の支えとなった一方で、期末に向けては米国の通商政策を巡る不透明感が相場の重しとなり、株式市場は先進国を中心に小幅な上昇に留まりました。また、外国為替市場では、米国連邦準備制度理事会(FRB)の利上げを契機に国内外の金利差が拡大したことなどから、ドル高(円安)基調となりました。このような結果、国内外の債券・株式の4資産すべての収益がプラスとなり、運用資産全体の運用実績はプラス1.68%となりました。資産配分を見ると国内債券の比率が27.14%となり、基本ポートフォリオ配分である35±10%の下限に近づいています。やはりGPIFはマイナス利回りの国債を購入することを躊躇していると見るべきでしょう。ここにきて日銀による若干の政策変更で日本の長期金利が上昇傾向(=債券価格下落)にありますから、GPIFの判断は的確だったということです。ただ、今後も長期金利が上昇していくようだと、恐らく国内債券クラスでマイナスリターンとなる時期も出てくるはず。やはり国内債券といえども安全資産ではないということを国民が理解する契機になればいいのですが。
さてGPIFの基本ポートフォリオですが、さすがよく考えられています。市場運用開始来、年利3%台で運用しているわけですから、まさに資産運用のお手本のような手堅さです。GPIFの基本ポートフォリオというのは、ある意味で分散投資における資産配分のひとつのモデルケースかもしれません。ちなみに現在のGPIFの基本ポートフォリオは以下の配分と定められています。
国内債券 35%
外国債券 15%
国内株式 25%
外国株式 25%
これは株式50%・債券50%というオーソドックスな配分です。さらに株式は国内と外国を半分ずつとすることで国内と海外の成長をバランスよく取り込むことができます。一方、債券は国内債券が多めにウエートされており、利回りを狙いつつも為替リスクが過剰にならないように配慮されています。なかなか心憎い配分でしょう。じつに美しい陣立てです。
最近、知り合いから企業型確定拠出年金(企業型DC)の運用方法について相談されました。インデックス投資のやり方などは比較的簡単に理解されるのですが、最大のハードルはやはり資産配分。こればっかりは試行錯誤しながら自分にとってしっくりとくるポートフォリオを作っていくしかありません。しかし、なんの参考例なしでは最初の一歩も踏み出せないのです。そこで最近はGPIFの資産配分を参考にするように紹介しています。
これから国際分散投資を始めようとしている人、あるいはインデックス投資初心者で資産配分に悩んでいる人は、GPIFの基本ポートフォリオを参考にしてみてはいかがでしょう。それ以外にもGPIFの運用には学ぶべき点が多々あります。そういえば、そういった点を日経新聞の田村正之解説委員も記事にしていました。こちらも大いに参考になります。
GPIFに学ぶ長期投資 鉄則は分散とリバランス(NIKKEI STYLE)
【スポンサードリンク・関連コンテンツ】