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2018年6月15日

金融機関による“ハメ込み”は世界共通の悪弊




ブルームバーグを読んでいたら、非常に面白い記事がありました。

ヘッジファンドの一押し銘柄、実は処分売り対象-大学院生が研究論文(ブルームバーグ)

あいかわらずヘッジファンドへのdisりが大好きなブルームバーグですが、今回もふるっています。でも、これって米国のヘッジファンドに限ったことではありません。金融機関が個人投資家を“ハメ込む”のは、どうやら世界共通の悪弊のようです。

ヘッジファンドに限らず金融機関が盛んに特定銘柄の購入を推奨するのは日本でもよくある現象です。大規模なセミナーに限らず、それこそ対面販売が中心の証券会社では証券マンが顧客に対して個人的にアドバイスするケースも少なくありません。ところがこうした「推奨銘柄」というのは、じつは金融機関の手持ち玉で“シコっている”玉の売り場を作るためではないかということをハーバード大学博士課程の学生、パトリック・ルオ君が検証したわけです。結論は以下のようになりました。
ルオ氏が2008年から13年までの30近い投資会議を検証したところによれば、会議で株式を宣伝するヘッジファンド運用者は、その銘柄を称賛してから平均で1四半期以内にポートフォリオの組み入れ比率を引き下げている。
あまりにあからさまで笑えます。まさに金融機関による「推奨銘柄」というのは、処分売りの対象だったのです。しかし、これは考えれば当たり前の話で、ルオ君も「そんなに良いアイデアならなぜ他人に話すのか」と指摘し、次のように実態を説明しています。
「ヘッジファンドはこうした会議の宣伝効果に便乗し、自身のポジション情報を戦略的に公表し市場の需要をかき立てる。特に、ヘッジファンドは宣伝した株の利益を確定してより良い投資の機会を探す余地を作るため、その銘柄を会議後に売却している」とルオ氏は指摘する。
こういうのを日本では“ハメ込み”というのです。こういったことは、ある程度の投資経験がある人にとっては感覚的に分かっていたことですが、こうやって大学院生が真面目に研究したということに意味がある。ある程度、実態が実証されたからです。そして、やはり金融機関が個人投資家をハメ込むのは世界共通の悪弊と言えそうです。

ちなみに、こういったひどい状態というのは日本の投資信託でもよく起こっていました。最近はそんなことも減りましたが、かつて日本のアクティブ型投資信託というのは業界関係者の間で「ゴミ箱」などと呼ばれていたものです。金融機関による自己勘定取引(銀行や証券会社などが自己資金を元手に市場取引を行うこと)でシコってしまった銘柄を、系列の運用会社で組成した投資信託に買わせるケースも少なくなかったからです。そんな投資信託を買わされる個人投資家はたまったものではありません。だから今でも年配の個人投資家のなかには「投資信託はゴミ。絶対に儲からん」と真顔で言う人がいます。

結局、金融機関の言うとおりに銘柄を買っているようでは、いつまで経っても金融機関の養分にされるという厳しい現実がある。でも、これっていまだにひっかかる個人投資家が後を絶ちません。最近ではイナゴ投資家という言葉さえ生まれているぐらいですから。そして、こういった不誠実なことを繰り返している金融機関の姿勢もまた、投資という行為がなかなか健全な行為として市民権を持ち得ない理由なのでしょう。その意味で金融機関も個人投資家ももっとよく考えなければならないのです。



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