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2018年5月23日

厚生労働省が金融機関に企業型確定拠出年金(企業型DC)の商品ラインアップ公開を命令するようだ



先日、金融機関が企業型確定拠出年金(企業型DC)で高コストな商品だけをラインアップするという悪質な行為が横行していることを指摘しました。この問題に関して、ここにきて大きな動きがあります。厚生労働省が「確定拠出年金法施行規則の一部を改正する省令案」を公開しており、現在パブリックコメント募集段階に進んでいます。このまま規則改正の省令が出れば、厚生労働省は金融機関に対して企業型DCの商品ラインアップの公開を命令することになります。これは企業型DCにとって画期的な動きです。

今回の厚労省による規則改正の動きについては大江英樹さんのツイートで知りました。



厚労省が公開している規則改正省令案は行政文書独特の非常に分かりにくい書式ですが、やはり大江さんがFacebookで次のように解説してくれています。
「確定拠出年金法施行規則の一部を改正する省令案」のパブコメが出ています。
結構これは画期的!今まで公表されていなかった企業型確定拠出年金の企業毎の商品内容がインターネットで誰でも見られるようにしなさい!という省令。
本来事業主が負担すべき口座料のディスカウントと引き換えにバカ高い手数料の投信を入れていたのが白日の下にさらされる。
昨年の委員会で私も主張していたことです。金融機関(運営管理機関)や一部の事業主が大反対していたけど、これは厚労省グッジョブ!!
みなさん、どんどんシェアして企業型確定拠出年金の加入者に知らせましょう!(^-^)
まさに画期的な規則改正です。やはり以前にも書きましたが、企業型DCで高コストな商品が横行している理由の1つが、それぞれのプランの加入者以外は実態が分からず、まったくブラックボックスに包まれていたからです。そもそも他のプランとの比較が出来なければ、自分が加入しているプランの商品ラインアップのコスト水準が高いのか低いのかすら分からないのは当たり前です(一部の金融リテラシーに高い受益者は個人型DCなどとの比較から判断していました)。

ところが規則改正によって運営管理機関である金融機関が企業ごとに提供している商品ラインアップを公開しなけければならなくなる。そうすると何が起こるか。運営管理金融機関が同じでも企業ごとに提供される商品は異なりますから、「なぜ私の勤務先には、あの低コストファンドを提供しないのか。別の企業には提供しているではないか」といった形で加入者が自分が加入しているプランの不備に気づく可能性が高まるのです。それに対して金融機関が何と答えるのか。はっきり言って答えられないと思う。そもそもが情報の非対称性を利用してボッタクリをしていたわけですから。

また、金融機関によっては明らかに他社と比べて高コストな商品ばかりラインアップしているケースなども白日の下にさらされるでしょう。それが自社系列の運用会社の商品ばかりだったりもする。そういう金融機関の姿勢に対して、はたしてフィデューシャリーデューティーの観点からどういった評価が下されるのかという問題も起こります。やはり金融機関は合理的な説明を求められるわけです。こういったことを考えると、今回の規則改正の省令が実施されれば、企業型DCを取り巻く環境は大きく変わる可能性を秘めている。

バンガードの創業者であるジョン・ボーグルは、運用業界の改善に必要なのは“日の光を当てること”だと指摘しました。情報公開こそが受益者の正しい判断の基盤であり、業界の自浄作用を生むのです。今回の厚労省による規則改正は、ぜひ実現して欲しいと思います。

※企業型DCに関して加入者は様々な思いや意見を持っていると思います。なのでパブリックコメントに応募するのもいいかもしれません。行政に直接声を届けることは、国民の正当な権利だからです。



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