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2018年5月12日
『金融広告を読め』―金融機関に騙されないための虎の巻
先日のオフ会でも話題になったのですが、あいかわらず金融機関による誤解を招くような金融商品の勧誘が続いています。例えば退職金を対象にした高金利定期預金と投資信託の抱き合わせ販売などは、どの銀行でも大々的に広告宣伝を打ちながら販売しています。しかし、そういった金融商品が本当にお得なのかは、そうとうに吟味する必要があります。それほど日本の金融商品の広告は酷い。ほとんど騙しのような手法が横行している。そうした金融機関による"ハメ込み"から身を守るための虎の巻として役に立つ本が、吉本佳生『金融広告を読め どれが当たりで、どれがハズレか』。少し古い本ですが、まだまだ十分に役に立つ本です。
この本の凄いところは、実際に世の中に流布している金融広告をリアルに再現したサンプルを使いながら、それがいかに誤解を招く表現によって消費者を集めているのかを縦横無尽に切っていくところです。しかも新書でありながら500ページを超えるボリューム。それこそ、これでもかというくらいに世の中に流布している金融商品のパターンを網羅しながら、そこに隠されている金融機関の意図を解明していく手際は、おそらく金融商品に詳しくない一般人からすれば、目からウロコでしょう。
例えば現在でもよく目にする高金利定期預金と投資信託の抱き合わせ販売。退職金などまとまった金額が銀行口座に振り込まれると、それを察知した銀行が必ずと言っていいほど提案してくる定番商品です。これに対して吉本氏は、こうした抱き合わせ販売が「手数料の水増し」の手段になっている構造を丁寧に解説していきます。普通、セット販売はバラで買うよりもお得なことが多いのですが、こと金融商品に関してはその逆の場合が多い。ここに金融商品の商品としての特殊性もあります。
そのほかにも外貨貯金、変額保険、仕組み債券、投資信託などなど、さまざまなタイプの金融商品の広告パターンが登場しますが、いずれも極めて誤解を招きやすい文言に溢れている。それをいちいち指摘していく作業は、さなが推理小説に登場する名探偵のような観察と吟味が必要なわけです。ちなみに本書のいちばん最後に登場する広告パターンは必見です。もっとも単純でありながら、もっとも悪質な金融広告です。実際にこのパターンの広告で個人の資金を集めるような金融商品は、じつは詐欺だったというパターンが多い。実際に金融詐欺事件になっている案件の広告は、ほとんどがこのパターンなのです。
本書を読むと、一般消費者をハメ込むことにひたすら能力を浪費している日本の金融機関の姿勢に対して、なんともいえない寂しさも感じます。そういう姿勢に対して著者は「金融機関は、歓楽街にある"風俗産業"と同じような商売のやり方をしている」とさえ書くのですが、まったく言いえて妙。世の中にボッタクリは多数ありますが、ボッた側が堂々と「ボッタクられるほうが悪い」と居直るような業界は風俗と投資・金融ぐらい。じつに情けない話です。そういった情けない状況を白日の下にさらすことで、本書は単なるノウハウ本、暴露本を超えた批評性を持っていると思えるのです。
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