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2018年3月6日

iDeCoや「積み立てNISA」の普及は日本の投資風景を変える



あいかわらず軟調な相場が続いていますが、そういった短期的な市場動向とは別に日本でもゆっくりと、そして着実に投資を巡る風景が変わってきたように感じます。最近、職場の同僚がまた1人、個人型確定拠出年金(iDeCo)に加入し、今月から積み立てによるインデックス投資をスタートさせました。私の職場でiDeCoに加入するのは、これで3人目。そして、別の1人も最近になってiDeCoに関心を持ち、加入を検討し始めました。また、「積み立てNISA」について聞かれることも増えています。わずか30人足らずの職場ですから、これはかなりの割合でしょう。目立たないけど、あきらかに時代が変化していることを実感。そして、この変化は近い将来、日本の投資風景を大きく変えるという予感を強く持ちました。

iDeCoへの関心は、なにも私の周辺だけでなく様々な場所で起こっているようです。国民年金基金連合会によると、2018年1月段階でiDeCo加入者は78万人を突破したとか。

iDeCoの1月新規加入者は3.8万人、加入者総数は78万人を突破(モーニングスター)

16年12月段階での加入者が約30万人ですから、加入対象拡大に合わせて倍以上の数になっています。また、企業型確定拠出年金の加入者は644万人(17年12月段階:厚生労働省発表)ですから、これも合わせると約720万人が何らかの形で投資をしていることになります。

さらに今年1月から「つみたてNISA」がスタートしました。1月末段階で口座開設は38万口座となり、とくに20代から40代が8割を占めるそうです。

積み立て投資に勢い NISAなど150万口座に 若者「手軽さ」支持(「日経新聞」電子版)

明らかに若者から壮年層が積極的に投資に踏み出そうとする動きが見て取れます。

もちろん絶対数から見れば、まだまだ小さな数字です。しかし、この小さな流れが集まって、やがて大きな潮流を作り出すはず。そして、それは日本の投資の風景を大きく変えるのではないでしょうか。その意味でモーニングスターに興味深い記事が載っていました。

「現金・預金好き」いつまで続けますか? 伸び悩む日本の個人金融資産(モーニングスター)

日米の金融資産に占めるリスク資産と現預金のウエートを比較したお馴染みの指摘なのですが、ここで注目すべきは以下のような指摘です。
このような日米の差を「国民性の違い」というのは間違いです。実際に、1985年くらいまでの米国の家計の金融資産に占める株式・投資信託の保有割合(年金保険等による間接保有分を除く)は15%程度で、現在の日本の保有割合と同じ程度でした。90年代になってから、米国で株式・投資信託の保有割合が急拡大し、現在に至っています。
元々は日米の金融資産の中身にはそれほど大きな違いはなかったのです。米国でも昔は現預金の割合が高かった。ところが90年代に入って急速に株式・投資信託の保有割合が拡大する。その背景にあったのは税制優遇のある個人年金口座の存在です。
この米国の株式・投資信託への投資意欲を高めるきっかけになったのは、401(K)(確定拠出年金)やIRA(個人退職勘定)などの税制優遇がある個人年金口座の存在です。いずれも1970年代に法律ができ、1980年代に普及しました。
これは、まさに日本でこれから起こることを予言しているのではないでしょうか。米国の401KやIRAにあたるのがiDeCoと「つみたてNISA」と言えるわけですから。これから10年すると、ある段階から急速に日本でも株式・投資信託の保有割合が増えても不思議ではありません。まさに投資の風景が一変する可能性を秘めているのです。

もちろん、90年代以降は紆余曲折を経ながらも米国の株式市場が極めて順調な上昇を続けたことも投資が普及した要因だと言えます。しかし、ここでもひとつの可能性が秘められている。なぜ90年代以降、米国株は順調に上昇したのか。それは、401KやIRAなどを通じて個人からの潤沢な資金が流入したからではないか。つまり、株式市場の需給環境を個人の資金が下支えした可能性があると思うのです。株式市場のユニークな特徴である「自己実現性」です。

対して日本の株式市場は現在でも足腰が弱く、ちょっとした外的ショックで大きく下げるパターンが続いています。この要因のひとつが、腰の座った国内の個人からの資金流入が貧弱なことでは。つまり需給を下支えする力に乏しいのです。

こういった日本の株式市場の足腰の弱さを克服する契機になるのが、iDeCoや「つみたてNISA」などを通じて流れ込む個人による長期投資の資金ではないないでしょうか。日本でも個人が株式の上昇を信じてコツコツと資金を投じ続けることで、実際に株価が上昇してしまうという「自己実現性」を発揮するチャンスが生まれるかもしれないのです。それもまた日本の投資の風景を劇的に変えてしまうはず。

そんな気配をiDeCoや「つみたてNISA」が少しずつ、でも着実に普及することから感じています。



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