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2018年1月15日
ブランド力の意味―「投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2017」の結果から見えてきたもの
「投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2017」の表彰式が13日に開催されました。私も昨年に続いて参加してきました。
「投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2017」公式ページ
投票結果を見ていつも感じるのですが、このランキングには現在の個人投資家が投資信託や運用会社に対して何を求めているのかということを如実に表しています。今回の結果も、まさにそのようなものでした。そこで私が感じたのは、投資信託やETF、そして運用会社の“ブランド力”の意味です。
「投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2017」の結果は次のようになりました。
1位 楽天・全世界株式インデックス・ファンド(楽天VT)
2位 <購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド
3位 楽天・全米株式インデックス・ファンド(楽天VTI)
4位 野村つみたて外国株投信
5位 eMAXIS Slimバランス(8資産均等型)
6位 ひふみ投信
7位 eMAXIS Slim新興国株式インデックス
8位 たわらノーロード先進国株式
9位 バンガード・トータル・ワールド・ストックETF(VT)
10位 iFree S&P500インデックスファンド
(11位以下はこちらを確認ください)
やはり最大の驚きは、昨年9月に設定されたばかりの「楽天・バンガード・ファンド」シリーズが1位と3位を獲得したことでしょう。バンガードのETFに投資するファンド・オブ・ファンズというやや変則的な方法ながら、極めて低コストで世界の株式や米国株に幅広く分散投資できる点が評価されたといえそうです。ただ、そういった商品特徴だけでは、今回のように新規設定されたばかりのファンドが高い支持を集める理由を説明できません。やはり「楽天・バンガード・ファンド」にはインデックス投資家を惹きつける“何か”があるのです。
端的に言ってそれはブランド力でしょう。もっとはっきり言ってしまうと、“バンガード”というブランド力です。インデックス投資家にとって今も昔も「バンガード」というブランドには特別の意味があります。それはインデックス投資の開祖であり総本山。バンガードのETFにいつかは投資してみたいと思っているインデックス投資家は少なくないのです。しかし、バンガードETFは海外ETFですから購入・保有には外貨調達や税務処理などそれなりのハードルがあります。昔に比べれば海外ETF購入・保有のためのインフラ整備が進みましたから難易度は下がっているのですが、それでも主にインデックス投資中級者以上の人しか実際には投資していませんでした。
ここで登場したのが「楽天・バンガード・ファンド」です。ファンド・オブ・ETFという方法を採用することで、あらゆる人が普通の投資信託を買うようにバンガードETFに投資できるようにした。これによって「バンガードETFを買いたい」「いつかはVT」と思っていたインデックス投資家の支持が一気に流れ込んだのでしょう。それを象徴しているのが、これまでFOYトップ10の上位常連だった本家「Vanguard Total World Stock ETF(VT)」が9位に、セゾン投信の「セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド」にいたっては11位まで後退したことです。明らかに従来は両ファンドに投票していた支持者の一部が「楽天・バンガード・ファンド」に流れたのでしょう。
「楽天・バンガード・ファンド」の躍進は、いかに「バンガード」というブランドの力が大きかったのかということをまざまざと見せつけた気がします。そこに着目してファンド設定した楽天投信投資顧問の慧眼も見事でした。もちろん楽天投信投資顧問独自の功績も無視できません。信託報酬を極めて低廉に設定することで実質的な運用管理費を抑え、バンガードETFの“超低コスト”という最大の特徴を大きく損なわなかったことも人気の要因でしょう。
こうしたことを考えると、今回のFOY2017は、投資信託やETFのブランド力とは何かと言うことを考えるいい材料になります。そもそも、なぜバンガードはこれほどまでのブランド力を築くことができたのか。それは、常に受益者の利益を最優先するというフィデューシャリーデューティーを実践してきたからです。具体的にはファンドの純資産残高が拡大するのに合わせてコストを引き下げ、ファンド成長による利益を徹底して受益者に還元することを実践してきたからにほかなりません。単にコストが安かったから支持されたのではなく、その過程に合理性と持続性、そして受益者に対する誠実な姿勢があったから強固なブランド力を獲得することができた。
このことは日本の運用会社も強烈に直視する必要があります。その意味でやはり個人投資家の眼はポイントを突いていると思えるのが、2位に「<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド」が入ったことでしょう。4連覇こそなりませんでしたが、根強い支持を集めていることが分かります。現在、ニッセイアセットマネジメントの「<購入・換金手数料なし>」シリーズは、三菱UFJ国際投信の「eMAXIS Slim」など徹底した低コスト戦略を掲げるファンドの追撃を受け、コスト競争力では厳しい戦いを強いられています。それでも今回のFOYで2位という結果になったのは、やはりファンドの成長にともなって断続的に信託報酬を引き下げてきたという「コスト引き下げの過程」が評価されているのでしょう。
表彰式で登壇したニッセイAMの上原秀信取締役執行役員は「ファンドが大きくなれば運用を効率化して、その利益を投資家に還元するのが立ち上げ当初からのコンセプト。今後もファンドを育ててくれた既存の受益者に(ファンド成長による)利益を返していく。ライバルファンドの低コスト化に心が折れそうになることもあるが、このコンセプトは不変」と熱く語っていました。こうした姿勢こそインデックスファンドの王道のやり方であるということを投票者は理解している。そして、これこそがインデックスファンドがブランド力を持つための道なのです。日本でも、そういう“ブランド力の意味”を理解し、王道を歩もうとする運用会社が多く誕生しようとしていることもまたFOYに代表される個人投資家・投信ブロガーの活動の成果だと誇っていいと思う。
そのほかにもFOYの結果からは、現在のインデックス投資家が何を感じ、何を求めているのかを読み取ることが可能です。それを運用会社など金融機関はよくよく考える必要があります。そこにはまさに宝の山が埋まっているのだし、正しい道を歩むための道しるべにもなるはずです。
最後に、これだけのイベントを手弁当で続けてきた実行委員の皆さんの努力に感謝したいと思います。また、懇親会を企画した有志の皆さんにも感謝の気持ちでいっぱいです。今回もむちゃくちゃ楽しいイベントでした。そしてお会いした投信ブロガーの皆さん、また何かの機会にぜひ再会しましょう。
【おまけ】
「ところで、お前はどのファンドに投票したのだ」という人がいるかもしれません。今回、私は「<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド」と20位に入った「三井住友・DCつみたてNISA・日本株インデックスファンド」「世界経済インデックスファンド」に投票しました。投票理由は以前に書いているので、そちらをご覧ください。
「投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2017」に投票しました
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