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2017年12月23日

じつは貴重な存在である「iFree新興国株式インデックス」―ファンダメンタルインデックスの可能性



最近は新興国株式インデックスファンドの信託報酬が劇的に下がり、私のような“新興国投資大好き人間”にとっては本当に素晴らしい時代になったものです。なにしろ「eMAXIS Slim新興国株式インデックス」に至っては信託報酬が年0.19%(税抜)ですから。一方、低コスト化とは別の観点から、私が秘かに注目している新興国株式インデックスファンドがあります。それは大和証券投資信託委託の「iFree新興国株式インデックス」です。

「iFree新興国株式インデックス」の最大の特徴は、投資対象となるインデックスが新興国株式インデックスとして一般的なMSCIエマージング・マーケット・インデックスではなく、FTSE RAFIエマージングインデックスであり、組入れ銘柄の選別基準が異なる点。MSCIエマージング・マーケット・インデックスがオーソドックスな時価総額加重平均に基づいて銘柄を組み入れるのに対して、FTSE RAFIエマージングインデックスは流動性基準、時価総額基準、浮動株調整をクリアした銘柄から「株主資本」「キャッシュフロー」「売上高」「配当」のという4つのファンダメンタル指標に基づいて銘柄を選定・ウエート付けすることになります。

ここからはあくまで私見となりますが、新興国株式でインデックス運用する場合、ファンダメンタルインデックスというのはひとつの有望な手法だと思う。それは新興国の株式市場のキャラクターを考慮した場合に、一般的な時価総額加重平均インデックスに付きまとうある種の弱点に対する対応策となりえる可能性があるということです。

時価総額加重平均インデックスは、文字通り時価総額の大きい銘柄が大きくウエート付けされますから、見方を変えるとどんなボロ株でも時価総額が大きい銘柄をたくさん保有してしまう。だから、時価総額加重平均インデックスが合理性を持つ前提には、その市場が効率化されていて、常にある程度は正しい値付けがなされていることが必要なのです。言い換えると「時価総額の大きさ≒企業の収益力・成長性etc」である必要があるということです。

この観点から株式市場を見ると、面白いことに気づきます。例えば米国株市場で時価総額の大きい企業というのアップル、アルファベット(グーグル)、アマゾン、フェイスブック、マイクロソフトなどほとんどが新興企業であり、しかも事業分野で圧倒的な支配力を持つ企業ばかり。つまり、ある程度は「時価総額≒企業の収益力・成長性etc」という公式が成立している可能性が高い。こういう市場なら時価総額加重平均インデックスにかなりの合理性があります。

一方、新興国(あるいは日本も)の株式市場で時価総額が大きい企業というのは、ほとんどが金融もしくは国営系(元国営を含む)企業です。金融は事業構造上、総資産が極めて大きくなりますから時価総額も大きくならざるを得ない。国営系企業はインフラ整備などで多額の国家資本が投入された結果として総資産が大きいケースが多く、やはり時価総額が大きくなりがちです。そしてこれらの場合、はたして「時価総額の大きさ≒企業の収益力・成長性etc」がどこまで成り立つのか分からない。もしかしたら倒産してもおかしくないようなゾンビ企業が、国家資本の支えによって時価総額が大きいままに生き残っているだけの可能性もあるのです。

この時価総額加重平均インデックスに対する不安を考慮して新興国株式でインデックス投資する場合、企業のファンダメンタルズを基準に銘柄を選定・ウエート付けするファンダメンタルインデックスを使うというのは、ひとつの見識ではないでしょうか。そして、実際にこうした考え方は以前からあって、2000年代初頭から米国ではファンダメンタルインデックスで運用するインデックスファンドやETFがたくさん登場し、日本でもそれを求める声が一部で根強くあったわけです。

こうした観点からすると「iFree新興国株式インデックス」という商品は、信託報酬0.34%(税抜)という低コストで新興国株式ファンダメンタルインデックスに投資できるじつに貴重なファンドなのです。確かに現在は実質コストが高くなっているのが弱点ですが、これから純資産総額が積み上がって実質コストも下がってくれば魅力が増すのでは。そして運用成績の面でも一般的な時価総額加重平均の新興国株式インデックスファンドと比較してどうなるのか非常に興味深い。

だから、「iFree新興国株式インデックス」という商品は、引き続き要注目のファンドだと思う。たしかにポートフォリオのコア商品にはなりえないけれども、コアポートフォリオの味付けに、あるいはサテライトポートフォリオで保有するには非常に面白いファンドではないでしょうか。



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