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2017年9月10日

滅びゆく市場と新たに勃興する市場―積み立て投資で勝負できない金融機関は生き残れない



日経新聞に次のような記事が出ていました。

公募投信残高、2年ぶり最高 現役世代の購入拡大(「日本経済新聞」電子版)

これを読むと、時代はゆっくりと、そして確実に変化していることが分かります。投資信託に限らず、投資商品を巡って市場が「死にゆく市場」と「新たに勃興する市場」へと二極化しつつある。だとするなら、金融機関が採るべき施策も明確でしょう。「新たに勃興する市場」すなわち積み立て投資の世界で勝負できない金融機関は生き残れないということです。

日経新聞の記事によると、2017年8月末段階での公募投信の残高が約102兆6000億円となり、2年3カ月ぶりに過去最高を更新しました。要因として日銀によるETFの買い入れがあるのですが、加えて見逃せないのが現役世代による積み立て投資の拡大による資金流入です。

こうした動きは、日本における株式や投資信託への資金循環構造を大きく変える可能性を秘めていることに注意が必要でしょう。例えば日経新聞の記事でも次のような指摘がなされています。
日本の個人投資家は従来、高齢者を中心に価格が上がったタイミングで保有ファンドを解約して利益を確定する投資行動が顕著だった。株式相場の上昇局面では、個人からの解約増が投信残高の拡大を抑制してきた。
日本の株式市場は米国株市場などと比べて上値が重いと言われてきたわけですが、その最大の責任は日本人投資家にあったのです。つまり、高齢者を中心にちょっと株価が上昇すると、いわゆる“やれやれ売り”を誘発し、資金が市場から流出してきたわけです。

しかし、現役世代による積み立て投資が普及すれば、こうした構造は変わります。記事にもあるように「積み立て投資は解約が少なく、投信市場の安定的な拡大が続きそうだ」ということになるからです。そういった個人投資家の世代交代が確実に進んでいるのです。

こうした状況は金融機関に大きな決断を迫るでしょう。はっきりしているのは、これまで金融機関の収益を支えた高齢者は、いずれいなくなる「滅びゆく市場」だということです。そして「新たに勃興する市場」こそが、現役世代による積み立て投資です。だとするならば、金融機関はどちらに経営資源を投入するべきでしょうか。

2018年から新たに「つみたてNISA」がスタートします。これによって現役世代による積み立て投資は今以上に拡大するに違いありません。つまり、現在起こっている投資の世界の構造変化が一段と加速する。そしてこれは、金融機関だって理解している。だからこそ、既に対応を始めたのです。やはり日経新聞に次のような記事が載っていました。

つみたてNISA、18年開始 予想上回る120本が対象に(NIKKEI STYLE)

金融機関は、いっきに「つみたてNISA」に対応した商品を拡充するなど対策を進めました。また、既に話題になっていますが、「つみたてNISA」対象商品となることが予定されているファンドの信託報酬引き下げも相次いでいます。これは何を意味しているのか。金融機関は、なにも金融庁に忖度しているのではない。金融機関は金融機関できちんと現実を直視している。つまり、将来の生き残りのためには、積み立て投資の世界で勝負できなければ、生き残ることができないという判断があるのです。これは営利企業として真っ当な経営政策上の判断です。

さて、今日9月10日には、東京で「つみたてNISAフェステバル2017」が開催されています。私は参加できませんが、こうしたイベントもまた時代の変化を如実に表すものでしょう。こうした動きを金融機関は直視しなければなりません。なぜなら、その先にこそ、新たな可能性を秘めた市場が存在するのですから。



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