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2017年5月9日

毎月分配金を欲しがる人には個人向け国債とETFを薦めなさい―お薦め商品を考えてみました



今回の記事は先日の記事の応用編です。金融庁に激しく批判されたことで金融機関も毎月分配型投信の販売がやりにくくなっているわけですが、一方でリタイア層を中心に長期的な資産の成長ではなく定期的なインカムゲインを現金で得たいというニーズは確かに存在します。こういうニーズに対して金融機関はどのように応えるべきでしょうか。私は「それでも毎月分配金が欲しいんや!」という人に対して金融機関は毎月分配型投信のような歪な商品ではなく個人向け国債とETFを組み合わせたポートフォリオを薦めるべきだと考えています。そこで“もし私が証券会社の営業マンだったら”という仮定で、ひとつ商品提案してみましょう。

まず顧客属性ですが、退職金2000万円の運用を相談されたとします。そのほかの資産状況なども勘案して半分の1000万円まではリスク資産に投じることになったと仮定します。そして、可能な限り毎月分配金が欲しいというのが顧客のニーズです。その場合、こういった商品とポートフォリオはいかがでしょうか(コスト、利回り、分配金水準などは2017年5月現在)。

2000万円のうち1000万円は無リスク資産に置いておくことになりますから、まずこれで国内債券を買う。もちろん商品は次の一択となります。

個人向け国債変動10年 1000万円分購入
保有コスト:0%
利回り:年利0.05%
利払い(支払回数):半年ごと(年2回)

これなら金利上昇リスクにも対応できます。このときに一括購入するのではなく、6カ月かけて毎月分割して購入します。個人向け国債は半年ごとの利払いですから、これで毎月利子が支払われることになります。ちなみに1000万円を6分割して購入すると(端数は適当に調整すればいい)、現在の金利水準なら毎月約400円の金利収入を得ることができます。

さては次はリスク資産の部分ですが、ここでETFを活用します。まず定期的なインカムゲインを狙うとなると債券を入れる必要があります。少し外国債券に挑戦しましょう。そこでまず先進国債券としてお薦めするのがこの商品。為替リスクが怖いですから購入金額は200万円とします。

上場インデックスファンド海外債券毎月分配(1677) 200万円分購入
信託報酬:税抜0.15%
決算(分配回数):毎月(年12回)

シティ世界国債インデックス(除く日本、ヘッジなし・円ベース)に連動するETFです。直近の分配金利回りは年3%程度ですから200万円分購入すれば毎月5000円程度の分配金になります。

さらに為替リスクをとって、新興国債券もほんの少しだけ組入れることにしましょう。選んだ商品はこれです。購入金額は先進国債券よりもさらに少なく100万円とします。

上場インデックスファンド新興国債券(1566) 100万円分購入
信託報酬:税抜0.35%
決算(分配回数):1、3、5、7、9、11月(年6回)

ブルームバーグ・バークレイズ自国通貨建て新興市場国債・10%国キャップ・インデックス(円ベース)に連動するETF。直近の分配金利回りは5%程度ですから、2カ月ごとに約8000円の分配金があります。

さて、さらにリスク資産の部分として株式を組み込んでいきます。まず国内株式ですが、やはりインカムゲイン狙いとなると高配当銘柄に投資したいところ。そこで次のETFを選びました。購入金額は350万円です。

上場インデックスファンド日本高配当(1698) 350万円分購入
信託報酬:税抜0.28%
決算(分配回数):1、4、7、10月(年4回)

東証配当フォーカス100指数に連動するETFですが、100銘柄中10銘柄はREITですから、不動産が大好きなシニア層も満足でしょう。直近の分配金利回りは2%程度ですから、3カ月ごとに17000円強が分配金として支払われます。また、株式のボラティリティを抑えたい場合は、上場MSCI日本株高配当低ボラティリティ(1399)も選択肢になります。MSCIジャパンIMIカスタム高流動性高利回り低ボラティリティ指数に連動するETFです。ただ、信託報酬が税抜0.35%とやや上昇し、直近の分配金利回りも2%弱と少し低下します。ほかにもやや分散度合いが低下しますが日経平均高配当株50指数に連動するNEXT FUNDS日経平均高配当株50指数連動型ETF(1489)という選択肢もあります。こちらは信託報酬が税抜0.28%。分配回数は年4回、直近の分配金利回りは3%程度です。どの商品を選ぶかは好みの問題でしょう。

最後に先進国株式。MSCIコクサイ・インデックスに連動するETFが王道ですが分配回数の多い商品があまりありません。そこで先進国株式の王様ともいえる米国株式を選ぶことにしました。ずばり商品はこれ。購入金額は350万円分です。

SPDR S&P500ETF(1557) 350万円分購入
総経費率:0.0945%
決算(分配回数):3、6、9、12月(年4回)

米国株価指数の本筋ともいえるS&P500に連動するETFですから、先進国株式の半分くらいはカバーできるでしょう。総経費率(信託報酬)の圧倒的な安さも魅力です。分配金利回りは2%程度ですから、3カ月ごとに17000円程度が支払われます。ただし、米国の配当課税も源泉徴収される点に注意が必要でしょう。まあ、この辺りはお金持ちなのだから税金は堂々と支払いましょうというふうに納得してもらうことにします。

2000万円の運用資金でこういったポートフォリオを組めば、株価の動きや為替要因による変動はあるものの、ほぼ毎月分配金を受け取ることができます。ざっくりと計算して年間の分配金収入は25万5000円。年間の分配金利回りは1.2%強です。なんだ、その程度かといわれそうですが、これが運用というものです。そもそも毎月分配型投資信託の分配金利回りなるものが異常なのです。

しかも、個人向け国債とETFによる運用なら、いくら分配金を貰っても元本払い戻し(特別分配金)にはなりません。ETFは純粋にインカムゲインからしか分配金を出せないからです。さらに株式ETFの部分については、株価上昇による元本部分の成長も期待できるのです。実際に今回のポートフォリオでの運用なら、過去15年間の実績を当てはめると平均リターン(年率)3%程度/リスク(年率)7%程度で運用できたことになります。これこそが“使いながら増やす”というリタイア層のための運用というものです。

そして何よりもコストです。今回、私が例示したポートフォリオのコストは、ざっくりと計算して年率0.097%。もちろん、これにETFの売買手数料が必要になりますが、それでも個人向け国債とETFを組み合わせたポートフォリオがいかに低コストかが分かるというもの。3%程度の購入手数料と年1%以上の信託報酬を取る毎月分配型投資信託がどれほどボッタクリなのかも分かります。

毎月分配を求める顧客に対して証券会社の営業マンは、こういったポートフォリオと商品提案を行うべきなのです。それは、そんなに難しいことではないでしょう。何しろズブの素人である私ですら、さらっとこの程度の提案ができるわけですから。実際は購入手続きのわずらわしさや購入金額の端数の処理など面倒くさい点もありますが、それこそ証券会社の営業マンの腕の見せ所であって、顧客に対して便宜を図ってあげなさい。それが対面型証券会社の強みとなるはずです。

こうやって顧客ニーズに応じて最適なポートフォリオと商品を提案すれば、証券会社の預かり資産も増えていくはず。それは証券会社の長期的な収益につながります。ようするに金融庁が求めている「顧客本位の営業」というのは、こういうことなのではないでしょうか。

※もちろんリスク資産への投資は元本保証がなく、分配金支払いも一切保証されたものでないことを重々説明することが提案の前提です。このことを理解できない顧客に対しては、リスク資産への投資は一切薦めるべきではない。それこそ個人向け国債変動10年で100%運用するポートフォリオを提案しましょう。2000万円の運用なら最低でも年間1万円の利払いがあります。

※※今回紹介したポートフォリオはひとつのケーススタディです。特定の銘柄を推奨するものではありませんのあしからず。いわずもがなですが、投資判断は自己責任でお願いします。



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