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2017年4月22日

「eMAXIS Slimバランス(8資産均等型)」が驚異の低コストで登場―積立NISA向けで大本命になるのでは



三菱UFJ国際投信のインデックスファンドシリーズ「eMAXIS」の“超”低コストラインである「eMAXIS Slim」から新たに「eMAXIS Slimバランス(8資産均等型)」が登場します。この手の情報では驚異の速報性を誇るアウターガイさんのブログで知ったのですが、三菱UFJ国際投信も正式にリリースを出しました。

『eMAXIS Slimバランス(8資産均等型)』募集・設定について(三菱UFJ国際投信)

なんといっても最大の特徴は信託報酬の安さ。年率0.22%(税抜)となり、8資産均等配分のバランス型インデックスファンドではコスト最安値に躍り出ました。均等配分のバランス型インデックスファンドは、その割り切った資産配分コンセプトから根強い人気がありますので、これは売れると思います。しかも来年から積立NISAも始まる。積立NISAでの購入ファンドとしてはバランス型インデックスファンドというのは有力な選択肢ですから、その点でも大本命になるのではないでしょうか(設定日は5月9日。販売会社はSBI証券、楽天証券、マネックス証券、カブドットコム証券)。

「eMAXIS Slimバランス(8資産均等型)」は、根強い人気がある「eMAXISバランス(8資産均等型)」と資産配分・マザーファンドも全く同じですから事実上、同一のファンドだと考えて構わないでしょう。ただ、信託報酬が0.22%と「eMAXISバランス(8資産均等型)」の半分以下。しかも「eMAXIS Slim」シリーズには新興国株式、新興国債券、国内REIT、先進国REITに投資する個別ファンドはありませんから、格安で新興国株式・債券と国内外REITに投資できることになります。なかでも新興国株式・債券は投資対象国の資本規制などの関係でコストダウンが難しく、低コスト化が遅れています。そのことを考えると、新興国株式・債券を含む資産配分のバランス型インデックスファンドとしては、驚異的な信託報酬の安さなのです。

また、「eMAXIS Slim」シリーズは、“常に業界最低水準の低コストを追求する”がコンセプト。これまで8資産均等配分のバランス型インデックスファンドでコスト最安値だった大和証券投資信託委託の「iFree8資産バランス」の信託報酬0.23(税抜)を下回って業界最安値に躍り出ました。「iFree」と横並びではなく、0.01%下回ったところに三菱UFJ国際投信の並々ならぬ意気込みを感じ、震えました。しかも純資産残高の増加に合わせて段階的に信託報酬が引き下げられる「受益者還元型信託報酬」も導入しているのですから憎いじゃないですか。「iFree」との信託報酬の差は0.01%ですが、実態としてはブッチギリの差があるコスト体系と言ってもいいかもしれません。

新規設定のファンドはしばらくは様子を見るというのが常識ですが、ある程度運用の安定性を確認できれば、8資産均等配分のバランス型インデックスファンドを買うなら「eMAXIS Slimバランス(8資産均等型)」の一択と言っていいでしょう。さらに低コストなファンドが登場する可能性もありますが、その場合も「eMAXIS Slim」なら追随して信託報酬の引き下げが期待できるからです。「iFree8資産バランス」との比較で言うと、「iFree」は新興国株式マザーファンドの対象インデックスがファンダメンタルインデックスであるFTSE RAFIエマージング・インデックスであるにに対して「eMAXIS Slim」はオーソドックスなMSCIエマージング・インデックスですから、新興国株式はFTSE RAFIエマージング・インデックスで投資したいという人以外はiFreeを選ぶ理由はありません。ましてや「eMAXISバランス(8資産均等型)」を選ぶ理由など一切ない。私は「eMAXISバランス(8資産均等型)」を積立投資していますが、早々に乗り換えを検討したいと思います。

しかし、三菱UFJ国際投信は本当に恐ろしい商品を出したと思います。「eMAXIS」と「eMAXIS Slim」を併存させることに対する“一物二価批判”などお構いなしです。やっぱり天下の三菱が本気になったら怖いね。手段を選ばずに競合相手を潰しに行くから。しかし、そのおかげで私たち個人投資家は、より充実した投資環境を手に入れることができる。三菱の野望が図らずも投資環境の改善につながるわけですから、これこそヘーゲル的な言い方ですが、「理性の狡知」というものなのでしょう。

ところで、三菱UFJ国際投信はなぜここにきて「eMAXIS Slimバランス(8資産均等型)」という商品を出してきたのでしょうか。恐らく来年から始まる積立NISAを視野に入れていると思う。NISAは口座内の売買ともに投資枠を消費しますからリバランスがけっこう難しい。そこで良質なバランスファンドを購入し、リバランスも投資枠を消費せずにファンド内で自動的にやってもらうというのが有力な考え方の一つです。だから運用会社にとって積立NISA対象ファンドとしてもバランスファンドが主戦場になると見ているのでは。そこに三菱UFJ国際投信は「eMAXIS Slimバランス(8資産均等型)」という“リーサル・ウェポン”を投入したのではないでしょうか。実際、積立NISA向けのインデックスファンドとして大本命だと思います。

いずれにしても素晴らしい商品の登場です。とくに「新興国投資」「バランスファンド」「均等配分」が好きな人にとっては、選択肢として文句なしで最有力となります。そして、三菱UFJ国際投信がこのような意欲的な商品を出してきたことで、積立NISA対象商品ということも視野に入れ、バランス型インデックスファンドで低コスト競争が起こって欲しいと思います。

【蛇足】
以下は蛇足です。「eMAXIS」と「eMAXIS Slim」は信託報酬を除いては事実上、同じファンドです。しかも両シリーズともノーロードのインターネット専用ファンドですから、ラップ口座といった一部特殊事例を除いてはメガバンク、地銀、大手証券、ネット証券それぞれが全く同じ条件で販売している。つまり、両シリーズの信託報酬の差には一切の合理性がありません(店頭での説明などにコストがかかるといった言い訳が通用しない)。ということは、「eMAXIS」を売れば金融機関が儲かり、「eMAXIS Slim」を売れば投資家が得をするということ。通常の商い行為であれば、企業が何をいくらで売ろうが自由です。しかし、金融商品の販売は金融機関と契約者との間の信認関係に基づくものであるべきでしょう。そこで金融機関は受益者の利益を専らにするというフィデューシャリーデューティー(受託者責任)が課せられる。そのことを考えると、「eMAXIS」と「eMAXIS Slim」の関係は、三菱UFJ国際投信の意図とは別に面白い事実を個人投資家に教えてくれます。それは、どちらの商品を扱うかで、金融機関が自己の利益と投資家の利益のどちらを重視しているかを明らかにしてしまうということ。だから、言いたいことは次の1点です。

「eMAXIS」だけ販売して「eMAXIS Slim」を取り扱わない金融機関はクソ。



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