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2017年3月6日

ご長寿ファンドは長期投資のひとつの成果を見せてくれる



投資信託という金融商品は売買に機動力がない(いつ売買注文を出しても約定日の終値で基準価額が決定されるから)ので、本質的に長期保有・長期投資を前提に設計された金融商品です。だから本来なら長く運用が続いているファンドがいくつも存在しているべきなのですが、日本の場合はなかなかそうはなっていません。この点に関してカン・チュンドさんが残念がる記事を書いていました。

人の寿命を超える投資信託、早く見てみたいです(カン・チュンドのインデックス投資のゴマはこう開け!)

私もこの考え方に賛同します。あいかわらず日本では短絡的なテーマ型投資信託が相次いで新規設定され、それなりの資金を集めているわけですが、そういった実績のないファンドよりも、長い運用の歴史を持つファンドを見直しても面白いかもしれません。なぜなら、ご長寿ファンドは長期投資のひとつの成功例を見せてくれるからです。

例えばカンさんの記事でも紹介されている大和証券投資信託委託の「大型株ファンド」は1961年に設定され、現在でも日本で運用が続けれれている最も古い投資信託ですが、目論見書や運用報告書を読むとなかなか興味深いものがあります。

目論見書に記載された設定来の分配金再投資基準価額の騰落率は、なんと+1551.6%です(2016年10月段階)。50年以上の運用によって設定時から15倍以上になっている。この50年間の間に日本株には、高度成長、バブル経済、バブル崩壊、失われた20年、ITバブル、ライブドアショック、リーマンショック、そしてアベノミクスと様々なことがありました。そんな紆余曲折を経ながらも、やはり50年を超える長期運用の結果、リターンは15倍になって現在に至っている。ファンドを設定時に100万円買った人が現在まで保有し続けていれば1500万円以上になっていたわけです。まさに長期投資のひとつの成果を見せてくれます(もちろんインフレ率を考慮する必要はありますが)。

ところが大型株ファンドの現在の純資産残高はわずか13億円。50年間の間にすさまじい勢いで資金が流出していきました。恐らく大型株ファンドの運用成果を完全に享受した受益者は、ほとんどいないと思います。きっと大型株ファンドを売った資金で別のファンドに乗り換えたり、あるいは別の金融商品に移ったのでしょう。そうした元受益者が、はたして50年で1500%以上のリターンを獲得できたのかは分かりません。少なくとも乗り換えに伴う手数料支払いで、かなり損をしたことだけは確実です。

大型株ファンドは、別に優れたファンドというわけではありません。どちらかというとインデックス並みのリターンしか確保できない凡庸なファンドです。でも、そんな凡庸なファンドでも50年以上にわたって長期運用すれば、リターンは1500%を超えていた。別に投資信託だけに限りません。個別株だって50年近く保有を続けていれば、その企業が倒産しない限り、配当込みでかなりのリターンがあったのです。実際に私の母親は40年以上前に祖父の勧めから嫁入りの支度金で大阪ガスの株を購入し、現在も保有を続けていますが、配当を含めるとやはりものすごいリターンになっています。

長期投資というのは、こういうものなのです。そして大型株ファンドのようなご長寿ファンドの観察すると、こうした長期投資のひとつの成果を具体的な形で見ることができます。いろいろな金融商品を渡り歩いたり、短期売買を繰り返しながらも、大型株ファンド以下のリターンしか得ることのできなかった投資家は、投資した対象が悪かったのではありません。我慢が足りなかっただけなのです。

大型株ファンドは、いまや歴史的な存在でしかありませんが、ひとつの長期投資の成果とはこういったものなのだということを現在に示すモデルケースにはなります。最近は良質なインデックスファンドも出そろい、いよいよ投資信託の本来の目的である長期投資のための環境がずいぶん整備されました。今度は、設定来50年を超えても純資産残高が拡大し続けるようなファンドが登場して欲しいと思います。そのとき、はたして大型株ファンドのような素晴らしいリターンを実現できていれば、それこそ長期投資の意義が人々の間で幅広く認知されるでしょうし、本当の意味で日本に長期投資という文化が根付くはずなのです。

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