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2016年7月29日
“クレクレ病”にかかった投資家たち―日銀や政府の政策目標は株価ではない
今日7月29日に日銀が金融政策決定会合の結果を発表します。なんらかの金融緩和策が発表されるとの期待感から、7月は株価も比較的堅調に上げてきたわけですが、ちょっと期待感が過熱気味の気配も。そんな気配を専門家も敏感に嗅ぎ取っていて、PIMCOのの世界戦略アドバイザー、リチャード・クラリダ氏がかなり悲観的なコメントを発表しています。
日銀の政策、市場が「失望」する確率50%以上-PIMCOクラリダ氏(ブルームバーグ)
実際に日銀の発表が市場関係者の期待を下回った場合、再び日本の株式相場は大きく下げるかもしれません。そうなると投資家の間からも日銀や政府を批判する発言が出てくるのが世の常でしょう。ただ、こういった批判は本来、お門違いなのです。なぜなら日銀や政府の政策目的は株価上昇ではないのだから。逆に反省すべきは、“クレクレ病”に侵された投資家の方なのかもしれません。
現在、日銀は量的・質的金融緩和とマイナス金利政策を実施しているわけですが、その目的はデフレからの脱却であって、べつに株価を上げることではありません。あくまで目的は期待インフレ率を引き上げ、実質金利(名目金利-期待インフレ率)を引き下げることで投資や消費を活性化することが狙いのはず。もちろん、その結果として株価は上昇するだろうし、そうなるであろうことを織り込んで先行指数的にも上昇するのですが、それはあくまで日銀の政策目標による結果的な現象のはずです。
これは政府の経済政策についても同様でしょう。そもそもどこの国でも政府の経済政策というのは、つきつめると目的は経済成長の実現と失業率の引き下げに行き着くわけであって、やはり株価の上昇というのは経済成長による結果的な現象です。
ところがどうも「目的」と「結果的な現象」を混同する投資家がいる。だから株価が低迷すると、やたらと日銀や政府に対策を要求する声が上がるし、最近の相場の動きも、一種の“催促相場”的な動きが顕著でした。そういう状況は、なんとなく不自然だと思うのは私だけでしょうか。まるで投資家の多くが中央銀行や政府に依存した“クレクレ病”にかかったような気さえします。
中央銀行や政府は株価が上昇しやすい環境を作るだけであって、直接に株価を引き上げるようなことはなかなかできません。結局のところ、株価が上昇するためには、企業がリスクを負って経済活動を活発化させることと、労働者が生産性を高めることしかないわけです。そして、そういった本質的な変化は、常にゆっくりとしか進みません。だから、株価の本質的な上昇というのも、ゆっくりしたものなのでしょう。
日銀がどのような政策を発表し、それによって株価がどうのように動くかは予想できませんが、いずれも過剰反応なのではないでしょうか。だから、過度に悲観も楽観もせずに市場に居続けることが大切。“クレクレ病”が市場に蔓延しているときだからこそ、投資家の本質的な胆力が試されているような気がしてなりません。
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