あらためて当たり前のことを確認すると、投資信託を通じて利益を得る条件は二つしかありません。それは「基準価格が上昇する」と「保有口数が増える(平均買付価格が下がる)」です。そして一定額を定期的に投資するドルコスト平均法による積立投資は、上げ相場と下げ相場それぞれの局面で、この二つの条件を確保しようという投資戦略になります。
上げ相場→基準価格が上昇する下げ相場になれば同じ金額で多くの口数を買付けることができ、平均買付価格は低下します。だから、積立投資というのは、下げ相場がないと儲からないともいえるのです。そう考えると、気分的にも楽になる。じつはこうした心理的な負担軽減も積立投資の大きなメリットなのです。相場は上がることもあれば下がることもあるからです。
下げ相場→保有口数が増える(平均買付価格が下がる)
もちろん、絶対に儲かるとは言えません。下げ相場がリターン拡大のテコとなるのは、いずれ投資対象の価値が回復することを前提とします。下げ相場が続く間は、確実に損も拡大します。基準価格が平均買付価格を上回らない限り、何年経とうが損益はプラス転換しないからです。そういう意味では、ドルコスト平均法による積立投資によってリスク自体は減りませんし、場合によってはリスクは拡大するかもしれない。これは非常に大切な点ですが、ドルコスト平均法で投資しても、リスクの総量は減りません。
しかし、永遠に続く下げ相場のようなケースを想定すること自体が無意味ともいえます。国際分散投資を行っているにもかかわらず、投資した全カテゴリーの相場が下落し続けるようなことになれば、世界経済は破綻するわけですから、そうなれば、もうどんな投資を行っていても損失は免れないはず。貯蓄による現金だって信用できない状態になるかもしれません。本多静六博士も私の財産告白 (実業之日本社文庫)の中で次のように指摘しています。
天下の大変動にあっては、いかなる財閥、個人も耐え得るものではない。
古往今来、天下滄桑の変の前には、天才者も凡人も、大事業家も小貯蓄家も、共に蒙るべき打撃に、大小軽重の差はなかったようである。こういう割り切りは、投資に限らず生活全般において大切です。
とはいえ、実際に相場が軟調になれば、やはり心配になってしまう人も多い。心配で夜も寝られなくなるようなら、思い切って新規投資を減らす、あるいは止めることも選択肢です。相場が下落して心配になるのは、そもそもリスク許容度を超えた投資を行ってしまっているからです。だったら無理をせず、新規の資金投入を止める。「休むもまた相場」です。ただし、保有資産を慌てて売ってはいけない。しばらく休んで、頭を冷やしてから考えましょう。案外、含み損なんて大したことないと感じるかもしれません。とくにサラリーマンの場合、毎月の給料で普通に生活が続いているケースが多いので、それほど含み損が気にならなくなる場合もあります。そうなって初めて自分の本当のリスク許容度がわかるともいえるのです。そして、そのころには相場も落ち着きを取り戻しているということが往々にしてあります。
いずれにしても、相場が下がれば、口数を増やす=平均買付価格を下げるチャンスと割り切れるようになれば、下げ相場でも落ち着いて投資を続けることができます。じつは、この“続けることができる”というのが、積立投資のもっとも優れた点のような気がします。
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