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2015年6月13日

地銀よ、低コストインデックスファンドを活用せよ

三菱UFJ投信が開いたブロガーミーティングの資料やブログ記事を読んでいて、非常に面白いと思ったことがあります。それは低コストインデックスファンドシリーズ、eMAXISが地方銀行のラップ口座(投資一任勘定口座)で売れているということ。このため三菱UFJ投信もeMAXISの販路を「ネットおよびラップ」と明確に位置づけはじめました。ラップ口座にはいろいろと問題がありますが、地方銀行がラップ口座の運用商品として低コストインデックスファンドシリーズを活用するというアイデアは不誠実な商品が多いメガバンクや大手証券会社のラップ口座と比較して、意外と有効かもしれません。それによって純資産総額が増えるのなら、結果的にネットでファンドを購入しているコツコツ投資家にとっても好影響が期待できます。

現在、多くの地方銀行は地域経済の縮小など市場環境の悪化から苦しい経営状況にあるとされています。預かり資金の運用も国債の金利低下でままならない。そこで地方のお金持ち老人に毎月分配型を中心とした投資信託を販売して、その場をしのいできました(いわゆるグロソブ人気の背景)。ところが高コストな投資信託の回転売買に対して金融庁が厳しい監視の眼を光らせはじめたことで、地方銀行を含む多くの銀行は投資信託の販売戦略で方向転換を余儀なくされています。そこで登場したのがラップ口座だといえます。

ラップ口座はラップフィー(口座手数料)が高額であるといった問題があるのですが、私は一概に商品コンセプト自体を否定はしません。すべての人が自分で投資について勉強できるわけではなく、そもそも勉強したくないという人も多いのですから、そういう人が納得して手間暇をかけない代償として手数料を支払うことを批判すべきではないからです(投資ブログを書いているような人からすれば信じられないかもしれませんが、世の中にはネット証券やネット銀行にログインする作業すら煩わしいと感じる人は少なくありません)。

ところが、多くのラップ口座はラップ専用ファンドと称する運用商品の中身が不誠実すぎることが口座手数料の高さ以上に問題なのです。例えば三井住友銀行の「SMBCファンドラップ」というラップ口座商品がありますが、まったくひどいものです。信託報酬以外に支払うラップフィーは固定報酬型が純資産総額の1.512%、成功報酬併用型が基本報酬1.188%+成功報酬(運用益の10.8%)とベラボウに高い上に、投資対象となる専用ファンドのラインアップは信託報酬が1%に迫るアクティブファンドばかり。あまりに不誠実すぎます。
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ラップ口座は中身が不誠実すぎる

このようなメガバンクの姿勢と比べると、地方銀行が低コストインデックスファンドをラップ口座のラインアップとして活用するのは正しい。もともと地方銀行はメガバンクのように傘下に運用会社を持たないケースが多いですから、商品選択のしがらみが少ないことを生かした取り組みになります。例えばeMAXISでポートフォリオを作れば、信託報酬は0.5%前後に収まるはず。そこでラップフィーを1%程度にすれば、トータルコストは1.5%前後。普通のアクティブファンドでも信託報酬1.5%というのはざらにありますから、しっかりとしたコンサルティングとメンテナンスを提供してもらえるなら口座契約者としても違和感はないでしょう。メガバンクのラップ口座に対しても十分に競争力を発揮できます(そのキモはラップフィーをメガバンク以下に抑えることですが)。地方には意外と富裕層が住んでいますから、日ごろの付き合いと合わせて彼らの資産を囲い込むことは地方銀行の生き残り策としても有効なはずです。

主要インデックスファンドシリーズを販売する地方銀行を比較

地方銀行が低コストインデックスファンドを大々的に販売した場合、現在は三菱UFJ投信のeMAXISシリーズと三井住友トラスト・アセットマネジメントのSMTシリーズが先行する低コストインデックスファンドシリーズの勢力図にも変化が生じるかもしれません。ちなみに主要シリーズを販売している地方銀行は以下のようになっています(2015年6月13日現在)。
eMAXIS(三菱UFJ投信)
紀陽銀行、熊本銀行、十六銀行、荘内銀行、常陽銀行、親和銀行、第四銀行、千葉銀行、南都銀行、百十四銀行、福岡銀行、福島銀行、北都銀行、北海道銀行、武蔵の銀行、山形銀行、横浜銀行
SMTインデックスシリーズ(三井住友トラスト・アセットマネジメント)
近畿大阪銀行、群馬銀行、京葉銀行、山陰合同銀行、荘内銀行、第四銀行、東京スター銀行、東京都民銀行、みちのく銀行、八千代銀行
野村インデックスファンド(Funds-i)(野村アセットマネジメント)
秋田銀行、足利銀行、阿波銀行、池田泉州銀行、伊予銀行、大垣共立銀行、香川銀行、鹿児島銀行、北九州銀行、山陰合同銀行、スルガ銀行、但馬銀行、中国銀行、筑波銀行、東邦銀行、名古屋銀行、肥後銀行、百五銀行、福井銀行、北洋銀行、北陸銀行、北國銀行、もみじ銀行、山口銀行、山梨中央銀行、琉球銀行
<購入・換金手数料なし>シリーズ(ニッセイアセットマネジメント)
福井銀行、三重銀行
これを見ると、やはりeMAXISとSMTは多くの地方銀行でも売られていますが、面白いのがFunds-iの販路が非常に充実していること。純資産総額の伸びでは苦戦するFunds-iですが、野村證券にやる気がない以上、野村AMとすれば地方銀行での販売を強化することが重要になってくるでしょう。また、ニッセイAMの<購入・換金手数料なし>シリーズは極めて競争力のある商品ですが、ネット証券以外での販路が弱い。これはネット証券以外で販売されていない三井住友トラストAMのインデックスeシリーズも同様です。このあたりが今後の純資産総額の伸びにどう影響してくるか気になるところです。

いずれにしても地方銀行のラップ口座という新しい販路の登場が、低コストインデックスファンドシリーズの普及や純資産総額の伸びにどのような影響をもたらすのか注目していきたいと思います。



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