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2015年2月4日

毎月分配型投信の正しさと愚かさ 2

私は、毎月分配型投信にはそのコンセプトに一定の正しさがあると認めていますが、実際に日本で販売されている毎月分配型投信は極めて問題のある商品が多いと考えています。なによりファンドの投資理念や投資家に対する説明が不誠実です。そして毎月分配という仕組みが、そうした愚かで不誠実な商品を生み出す温床となっていることが問題です。

例えば、いまだに証券会社の店頭やホームページを見ると「分配金利回りランキング」なる一覧表が掲げられるケースが多い。この「分配金利回り」という言葉は極めて不親切です。厳密には「利回り」は「(インカムゲイン+キャピタルゲイン)÷投資金額」であり、元本に対する「利率」とは異なるということは投資家なら知っていなければならないことなのですが、はたしてどれだけの毎月分配型投信保有者がこれを理解しているか疑問です。結局、分配金利回りという表現が、ファンドの営業ツールに過ぎないのではとの疑念を持ちます。実際に人気のある毎月分配型投信の多くは過剰な分配金を出すことで基準価格が低下し、逆に見かけ上の分配金利回りが上昇してさらに人気が高まるという歪な傾向があります。

さらに問題なのが、過剰な分配金を出すために歪な構造のファンドが人気を集めることです。例えば私が使っているSBI証券の投信販売額ランキングを見ると1位に好配当グローバルREITプレミアム・ファンド通貨セレクトコース(愛称 トリプルストラテジー)(損保ジャパン日本興亜アセットマネジメント)が入っています。「UBPオポチュニティーズTCWグローバルリートプレミアムマルチカレンシー」と「損保ジャパン日本債券マザーファンド」を主要投資対象とするファンド・オブ・ファンドズ形式の投信ですが、カバードコールのオプション取引を行った上で高金利の新興国6通貨で為替取引を行うといういわゆる“三階建て”の運用です。はっきり言っていびつです。そもそもカバードコールのオプション取引でREIT価格上昇時の利益を一部放棄してオプション収入を得ることでリスクを低減しているはずなのに、それを新興国6通貨で運用するのでは為替リスクが増加してしまい整合性が取れませんし、オプションの「売り」は一定のオプション料を得る替わりに相場が思惑と反対方向に大きく動くと損失が無限大に拡大する危険性もあります。そして分配金は毎月1万口当たり200円出ています。基準価格は5,000円台にまで低下していますから、明らかに過剰な分配金を出していると考えられます。結局、運用の目的が高額分配金を維持することだけになっており、カバードコール戦略も通貨取引も分配金原資のための日銭稼ぎの手段になっています。これでは目論見書に記載されたファンドの目的である「信託財産の成長を図ること」と齟齬が出ます。

さらに奇怪な投信として日本株アルファ・カルテット(毎月分配型)(大和住銀投信投資顧問)を例に挙げましょう。これもファンド・オブ・ファンズ形式の投信ですが、日本株に投資しながら、株のカバードコールのオプション取引、ブラジルレアルでの為替取引、さらに通貨のカバードコールオプション取引を行うという“四階建て”の運用です。ここまでくると普通の投資家には理解不可能な内容です。なにが悲しくて日本株に投資しながら、ブラジルレアルの為替リスクを負わなければならないのでしょうか。そして、ご多聞に漏れず分配金は毎月1万口当たり300円。あきらかに不健全で過剰な金額です。

こうしたいびつな構造の投信が、一時的な分配金の高さと高利回りから売れてしまうというのが現在の日本の投信市場の現状です。毎月分配型投信は、定期的な資産取り崩しが必要なシニア層やリタイア層の出口戦略ニーズに適した設計だということまでは私も認めます。しかし、シニア層やリタイア層にカバードコール戦略や通貨取引が必要でしょうか。過剰な分配金を維持するためだけが目的なら、それは不健全であり、運用の志が低い。そこに日本の毎月分配型投信の“愚かさ”があるわけです。



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