2016年8月27日

超低コストインデックスファンド「iFree」が登場―他社も見習って欲しい国内債券ファンドの信託報酬の仕組み



なぜか海外出張に行っている間にインデックスファンドに関する大きなニュースが入ってくるのが不思議です。すでにたくさんの投資ブロガーさんが報告しているので、すっかり出遅れの感がありますが、自分の備忘録として書いておきます。大和証券投資信託委託が新たに超低コストインデックスファンドシリーズ「iFree」を2016年9月8日に設定することになりました。

新しいインデックスファンド・シリーズ「iFree」のお知らせ(大和証券投資信託委託)

まずはSBI証券と楽天証券で販売が始まります。ラインアップされた各ファンドとも業界最低水準の信託報酬ですから、インデックス投資家にとっては新たな選択肢として注目されそう。とくに個人的に注目しているのはiFree日本債券インデックスの二段階に設定された信託報酬の仕組みです。これはぜひ他社のインデックスファンドシリーズも見習って欲しいやり方です。

新規設定される12ファンドは以下のラインアップとなります。



プレスリリースにある各ファンドの説明を読んでもベンチマークが「配当込み」なのか「配当含まず」なのかがよく分からないのですが、それでも驚くべき低コスト。大和証券投資信託委託は従来、低コストインデックスファンドという分野に対してやる気があるのかないのかよく分からないスタンツだったのですが、ようやく本気になったということでしょう。いずれのファンドも業界最低水準の信託報酬ですから、確定拠出年金(DC)やラップ口座専用ファンドでなければ、インデックス投資家にとっては有力な選択肢となりえます。

注目点としてよく指摘されているのは、iFree新興国株式インデックスのベンチマークが一般的なMSCI・エマージング・マーケット・インデックスやFTSE・エマージング・インデックスといった時価総額加重平均インデックスではなく、財務内容や配当状況を基準に算出するファンダメンタルインデックスであるFTSE RAFIエマージング・インデックスだということでしょう。この点に関してはkenzさんが非常に詳しい内容を紹介しているので参考になります。

FTSE RAFIエマージング インデックスの中身 国別構成比率や過去のリターンを確認(インデックス投資日記@川崎)

通常の時価総額加重平均インデックスと比べて分散の度合いが低く、リターンも継続的に時価総額加重平均インデックスを上回ることができるのかは長期的に研究する必要がありますから、はたしてインデックス投資のコアファンドになりうるのかというのは意見の分かれるところでしょう。ただ、ファンダメンタルインデックスに連動する低コストファンドが欲しかったという意見もあるので、最終的には好みの問題となるかもしれません。

最大の注目点は国内債券ファンドの長期金利連動型信託報酬


それよりも個人的に大いに注目したのは国内債券ファンドであるiFree日本債券インデックスの信託報酬の仕組みです。iFree日本債券インデックスの信託報酬は税抜0.22%ですが、新発10年国債の利回りが1%未満になると、税抜0.15%に自動的に引き下げられる二段階方式が採用されています。これは一種の長期金利連動型信託報酬ですが、じつに素晴らしい仕組みです。

現在、日本の長期金利は日銀による量的緩和とマイナス金利政策によって異常な低水準となっています。実際に新発10年国債の利回りは2016年8月25日段階で-0.085%。このため国内債券インデックスファンドの最終利回りもマイナスです。保有債券の債券価格が上昇しているのでいまのところファンドの収益率はプラスを維持しているようですが、債券は償還による乗り換えがありますので、このまま長期金利の低下が長期化すると、国内債券ファンドの収益率は限りなくゼロに近づいていくでしょう。

この場合、例え低コストでも信託報酬が発生すると、信託報酬控除後のリターンはマイナスになる可能性が高い。つまり、国内債券ファンドは保有しているだけで目減りしてしまうのです。この問題は、信託報酬が高いアクティブファンドでは既に問題になっていたため、一部の国内債券アクティブファンドでは長期金利が1%未満になる場合は限定的に信託報酬を引き下げる動きがありました(例えば、ニッセイ日本インカムオープンなど)。

インデックスファンドは信託報酬が低かったので、金利低下によって国内債券ファンドの収益率に信託報酬が与えるダメージの大きさが看過されてきたのですが、大和証券投資信託委託はiFreeシリーズでようやくこの問題にメスを入れました。これは大いに評価すべきです。私は基本的に新規設定のファンドは資産残高がある程度積み上がり、安定的な運用ができるようになるまでは乗り換えない主義なのですが、iFree日本債券インデックスは非常に魅力的。すでに国内債券ファンドの新規購入は減額していますが、これまで購入した分は保有し続けているので、場合によっては一気に乗り換えることも検討したくなります。

だから、iFree日本債券インデックスの信託報酬の仕組みは、ぜひとも他社のインデックスファンドシリーズも見習って欲しい。販売会社との関係で既存ファンドの信託報酬を引き下げるのは非常にハードルが高いですが、少なくとも国内債券インデックスファンドに関しては、緊急避難的な一時的措置でも構わないので、長期金利連動型の信託報酬の仕組みを導入するべきです。そうでないと、国内債券インデックスファンドは、新規購入どころかすでに購入済みのファンドを保有し続けることさえ難しくなります。

こういったことを含めて、iFreeの登場は非常にインパクトがありました。これを契機に、金融機関のさらなる健全な競争が進むことで受益者の利便性が高まることを期待したいと思います。

【ご参考】
iFreeシリーズを販売するSBI証券と楽天証券の口座はネットから無料で簡単に開設できます。⇒SBI証券 楽天証券

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